『タリーと私の秘密の時間』
監督:ジェイソン・ライトマン
出演:シャーリーズ・セロン、マッケンジー・デイヴィス
配給:キノフィルムズ TOHOシネマズ シャンテほかにて公開中
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グラマラスな美しさを封印してオスカー女優となった『モンスター』や、スキンヘッドの戦士役で男も女も惚れさせた『マッド・マックス 怒りのデスロード』、傷だらけになりながらアクションに挑んだ『アトミック・ブロンド』など、体当たりという言葉が物足りなくなるほど、本気の満身創痍を見せ続けているシャーリーズ・セロン。彼女の出演作は欠かさずチェックしているというミモレ読者の方も多いのではないでしょうか。新作『タリーと私の秘密の時間』では18㎏(!)も体重を増やして、産後の母親を演じています。
ふたりの子どもを育てているマーロは3人目のベビーが誕生したことで、パンク寸前に。
兄の提案で夜だけのベビーシッターを頼んでみたところ、まだ若いタリーがやってきます。ルックスからは想像もできないほどの完璧な仕事ぶりと、彼女と一緒に過ごす時間のおかげで元気を取り戻していくマーロでしたが、タリーは夜が明ける前には必ずいなくなり、自分の普段の暮らしについてはまったく語らない女の子で――。
産後すぐのあのお腹まわりと、人には見せられない授乳期間のあの身なり、増量したシャーリーズの肉体の説得力たるや! 脚本を手がけたディアブロ・コディの実体験から生まれたという脚本は、“産後あるある”満載です。なかでもすごくリアルだな~と共感してしまったのは、マーロの夫が紋切り型の悪者には描かれていないところ。休日には子供の面倒もよく見てくれて妻への思いやりもあるけれど、仕事は忙しいし、どうしてもマーロの大変さのすべてを理解してあげることができない。このあたりのキャラクター描写の匙加減が何とも絶妙で、こういうダンナさん、いるいる! という感じなんですよね。ワンオペ育児でへとへとになっている人は、夫にこの映画を観てもらうとよいのでは? と思ったほどです。
大人になりきれない大人の琴線に触れまくった『ヤング≒アダルト』の監督、脚本、主演チームが再タッグを組んだ作品らしく、育児に奮闘中の人だけではなく“あの頃、思い描いていた私になれている?”とつい自分を追い込んでしまう人にも観てほしい作品でもあります。自分にがっかりしたくなくて、私はもっとできるはず…と頑張ってパンクしてしまう前に、ときには誰かを頼って自分で自分の機嫌を取る時間も大人には必要なことなのかもしれません。タリーをめぐる驚きの仕掛けの向こう側に描かれる風景はとても優しく、私自身が私を労わり、愛してあげることの大切さがじわりと胸に染みてきます。
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