キミドリ85さんからの質問
Q. 自分のことで精一杯。
それでも親の世話をすることは当然ですか?

50代で遺伝性の病で身体が不自由になってしまった母と、まだ自営業でバリバリ働いている父。娘の私に介護を手伝ってもらいたいと思っているようですが、私も5人目の子を授かり余裕がありません。父も母もハッキリ何かして欲しいとは決して言いませんが、それが当たり前と考えているのか、私が出産するとまた何年か身動きが取れなくなるのが困る、と遠回しに伝えてきました。親の面倒を見ることは義務なのか? それをしない娘は親不孝なのか? 自分の幸せと親の幸せ、両方を兼ね備えた選択とは何なのかと毎日自問自答しています。しかも主人は「これを機に仕事を変えて田舎暮らしをしたい」と言いだし、そうなれば両親の家から遠く離れた場所に移住することになりそうなのです。主人は、「親が子に何かしてあげるのは当たり前でそのお返しを考える必要はないんじゃないか?」と言います。が、病気で辛い思いをしている母を見捨てる気がして苦しいです。何かお知恵を貸していただければと思い投稿しました。(37歳)

特別ゲスト 樋野興夫先生の回答
A. 自分の家族は人に看てもらい、人の家族を自分が看る。
それが当たり前の社会になっていくことでしょう。

がん哲学外来にも、「子どもが面倒を見てくれない」という相談が多く寄せられます。そのとき私は、「子どもはプレゼントであり親の所有物ではない、自己放棄しないといけません」と伝えています。家族における優先順位の1位は夫婦ですから、お母様の介護はまずはお父様がおこない、お父様ができない分に関しては第三者の手を借りる、これが順位かと思います。今は介護保険によるサービスを受けることもできますし、介護施設も充実してきています。自分の家族は人に看てもらい、人の家族を自分が看る、そんな社会になってきているのです。

この考え方は親が年老いた場合に限らず、家族の誰かががんになったときも同様です。がんは発症してからの付き合いが長いですから、家族による看病が必要なときも出てきます。とくに日本は、介護において第三者の手を借りることに罪悪感を抱く人が少なくありません。そのため家族だけですべてを担おうとし、体力的な限界から仕事をやめてしまう人も多い。もっと、第三者が看ることに抵抗がない、という社会になってほしいものです。

私の妻はアメリカ人なのですが、アメリカでは第三者による介護サービスを受けることが当たり前になっています。妻の母は長年夫の介護をしていたいのですが、昼間は自分で看て、夜は介護の人に来てもらう、という体制をとっていました。そうすると夜がしっかり眠れますから、昼間は頑張れるのですよ。人に看てもらうことが当たり前になるーー、私の夢は、そんな社会を実現することでもあるのです。

ですからキミドリ85さんが、お母様を見捨てるような気持ちになる必要はまったくありません。大切なのは、お母様の気持ちに寄り添うことです。「見守っているよ」という気持ちさえ伝えていられたなら、物理的な介護をしているかしていないかは、悩むべき問題ではないのです。

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 取材・文/山本奈緒子 

 

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