「これから」の社会がどうなっていくのか、100年時代を生き抜く私たちは、どう向き合っていくのか。思考の羅針盤ともなる「教養」を、講談社のウェブメディア 現代ビジネスの記事から毎回ピックアップする連載。
今回は、経済評論家であり『お金持ちの教科書』でお馴染みの加谷珪一さんの「これからの介護」についての記事をお届けします。

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人生100年時代を迎え、介護の問題がより重要性を増している。自身の介護を気にする年齢に達した人はもちろんのこと、40代後半になると親の介護が現実的な段階に入り始める。 たいていの場合、介護は突然やってくるので、予備知識を持たないまま介護生活に突入し、場合によっては過剰出費と老後貧乏を招いてしまう。 不完全ではあるものの、日本には介護保険制度があるので、平均的な経済力の世帯であれば、制度が存続している限り、介護によって家計が破綻する可能性は低い。ただ介護の実態や制度をよく知らないと、思わぬ損失を抱えてしまう可能性があるので事前の準備が何よりも大切だ。
 

2025年以降、介護の問題は深刻化する


2017年末の時点で要介護もしくは要支援の対象になっているのは640万人である。2017年時点における日本の65歳以上の人口は3522万人なので、単純計算では高齢者の18%が要介護もしくは要支援の対象ということになる。一時期、要介護者の増加ペースには鈍化が見られたが、2012年頃から再び上昇ペースが加速している。

今後、日本の総人口が減少していくのはほぼ確実であり、これに伴って高齢者の割合はさらに増加してくることになる。2025年には戦後のベビーブーム世代が75歳以上の後期高齢者になることから「2025年問題」などと言われることもある。

 

人口減少と高齢化によって日本社会の状況が大きく変化するのは、介護に限った話ではなく、年金や医療など、すべての社会保障に共通したテーマである。現時点と比較すると、かなり厳しい状況となるのは間違いない。介護については、何とかなるという根拠のない楽観論と、介護負担で家計は大変なことになるという過剰な悲観論の両極端になっているが、真実はおそらくどちらでもないだろう。

最初に理解しておくべきなのは、年金と同様、日本の介護制度というのは、完全な個人完結型にはなっておらず、家族が老後の面倒を見るという考え方がベースになっているという点である。

日本の介護制度は、在宅介護を基本としており、それが実施できない人だけが介護施設に入る仕組みになっている。このため、寝たきりの状態となり、最終的な寿命をまっとうする段階まで公的にケアしてもらえる施設は、事実上、特別養護老人ホーム(特養)しかない。

特養以外にも有料老人ホームなどがあり、施設によっては最期まで入所できるところもあるが、有料老人ホームに入るためには最低でも月額15万円以上の支出を見ておく必要がある。それなりの経済力のある人しか入所できないと思った方がよい。