「これから」の社会がどうなっていくのか、100年時代を生き抜く私たちは、どう向き合っていくのか。思考の羅針盤ともなる「教養」を、講談社のウェブメディア 現代ビジネスの記事から毎回ピックアップする連載。
10年後、20年後の日本にいったいどんな未来が待ち受けるかをリアルに描いた『未来の年表』(53万部)、『未来の年表2』(20万部)は、累計73万部を突破しています。それらの著者でジャーナリストの河合雅司さんが『未来の年表2』刊行時に執筆した記事をお届けします。
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女性の2人に1人が90歳まで生きる
日本は「おばあちゃん大国」への道を邁進している。
昨年の敬老の日に合わせて、総務省が発表した推計(2017年9月15日現在)によれば、65歳以上の高齢者は前年比57万人増の3514万人だが、これを男女別にみると男性1525万人、女性1988万人で女性が463万人多い。
女性100人に対する男性の人数でみても、15歳未満では105.0、15~64歳は102.3と男性が上回るものの、65歳以上になると割合は逆転する。男性は76.7にまで落ち込んでいるのだ。
総じて女性のほうが長寿であるためだ。厚生労働省の「簡易生命表」によれば、2017年の日本人の平均寿命は男性81.09歳、女性は87.26歳となり、ともに過去最高を更新した。ちなみに、戦後間もない1947年は男性が50.06歳、女性53.96歳であった。
この頃「人生100年時代」と言われるようになったが、「簡易生命表」で確認してみよう。2017年生まれが90歳まで生きる割合は、女性が2人に1人(50.2%)、男性も4人に1人(25.8%)だ。95歳までなら、女性25.5%、男性9.1%に上るという。
各年齢の平均余命をみると、2017年時点で40歳だった人の平均余命は男性42.05年、女性は47.90年だ。70歳だった人は男性15.73年、女性20.03年である。
「おばあちゃん大国」となった日本では、〝80代ガール〟がファッションリーダーとなり、今では考えられないような流行やブームが到来するかもしれない。
かつてない規模で「定年女子」が誕生する
だが、長寿を喜んでばかりはいられない。
平均寿命が延びたといっても、「若き時代」が増えるわけではない。老後がひたすら延び続け、戦後間もない時代の高齢者には想像もできないほど膨大な時間を過ごすことになる。それは、老後の収入をどう安定的に確保するかを考えなければならないということに他ならない。
「簡易生命表」の数字を見るかぎり、誰が100歳まで生きなければならないか分からない。とりわけ確率が高い女性の場合、人生100年を前提してライフプランを立てておいたほうが無難だ。
もちろん、これからの「おばあちゃん像」は大きく変わる。一昔前に比べて若々しい人が目立つようになったが、変わるのは容姿だけではない。1986年に男女雇用機会均等法が施行されて以降、女性の社会進出が進んだ。
もうすぐ、われわれは、日本のビジネス史において経験したことがない場面に遭遇することだろう。かつてない規模での「定年女子」の誕生だ。
総務省による2017年の「労働力調査(速報値)」を見ると、55歳から64歳の女性の正規職員・従業員は131万人いる。45歳から54歳となると、250万人だ。
65歳を定年と見なして、この女性たちが定年を迎える場合、10年後には131万人の女性が定年を迎えており、20年後にはさらに250万人の女性が定年に達している。合わせると、約380万人の女性が定年後の生活を歩むことになるのだ。
男女雇用機会均等法の施行以降、オフィスの風景は様変わりした。寿退社が多く、コピー取りやお茶汲みが女性の仕事とされた時代は完全に終わり、今後は1つの会社に勤め続けて定年退職を迎える女性社員が増えてくる。
統計の数値がそれを先取りしている。総務省の「労働力調査(基本集計)」の平均速報(2017年)によれば、定年まで10年以内の55〜59歳の女性の就業率は、2007年の59.5%から2017年には70.5%へ上昇した。60〜64歳も2007年の41.0%から2017年は53.6%に増加した。
内閣府の「男女共同参画白書」(2016年版)は、「子供ができても、ずっと職業を続ける方がよい」と考えている人は45.8%だと伝えている。1つの会社に勤め続け、昇進する女性も珍しくなくなり、女性役員も次々と誕生した。厚生労働省の「雇用均等基本調査」(2016年度)によると、課長相当職以上の管理職の12.1%は女性である。
男女雇用機会均等法の施行年に四年制大学を卒業して就職した女性の多くが、2024年には60代に突入する。この世代は途中で退職した人も少なくないが、彼女たちより少し後の世代は働き続けている割合が増えてきており、定年まで働き続ける女性はさらに増え続けることが予想される。
「人生100年時代」を展望したライフプランを考えるとき、定年後も働くというのは大きな選択肢の一つとなろう。ところが、定年女子を待ち受ける雇用環境は、現時点では決してバラ色ではない。定年退職を迎える女性の場合、厳しい現実が立ちはだかっている。
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