『かごの中の瞳』
監督:マーク・フォースター
出演:ブレイク・ライヴリー、ジェイソン・クラーク
配給:キノフィルムズ/木下グループ  9月28日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほかにて公開
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ドラマ『ゴシップ・ガール』以降も、多彩な役柄にチャレンジし続けているブレイク・ライヴリー。ハル・ベリーにオスカーをもたらした『チョコレート』からゾンビ映画『ワールド・ウォーZ』、最新作の『プーと大人になった僕』まで幅広い作品を手がける職人監督、マーク・フォースターとタッグを組んだサスペンスが公開されます。

ライヴリーが演じるのは、子供の頃の交通事故が原因で、視力を失ってしまったジーナ。大人になった彼女は心優しく献身的な夫のジェームズとともに、バンコクで幸せに暮らしています。角膜移植手術を受けて片目の視力を取り戻した彼女は、これまで自分が親しんできた世界を初めて目にすることに。視力の回復とともに好奇心を目覚めさせたジーナは、自分の中の欲望をどんどん解放していきます。けれどもある日、なぜか再び視力が失われはじめていくのです。

 

光や色がにじむジーナの視界を表現した映像はときに詩的ですらあるのですが、世界が見えるようになったことで変わっていく夫婦関係の描写は、なかなか残酷でスリリングです。このふたりは目が不自由な妻を夫がサポートし、妻は心優しい夫を頼ることで成立していた夫婦でした。けれども“見える”ようになったことによって、そのバランスに変化が訪れます。想像していたよりも地味で冴えない男だったことに、ひっそりと落胆する妻。性的にも自由になっていく妻に対して独占欲と不安、猜疑心をつのらせる夫――。結婚してみたら相手の本当の姿が露わになった…、ということは結構あるあるかもしれません。どんなカップルにとっても永遠の課題である、守ることと守られること、男と女の理想と現実とパワーバランスが、官能的な映像で描かれています。

『レボリューショナリー・ロード 燃え尽きるまで』『ブルー・バレンタイン』などと同じく、爽快ではない後味について語り合いたくなる夫婦もの。妻と夫、どちらに肩入れするかで鑑賞後の感想が変わってきそうなサスペンスです。ミモレ読者のみなさんは、どちらに感情移入するでしょうか?

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