高齢者の外出が増えれば、電車のダイヤ乱れも懸念される。現在、東京や大阪といった大都市では、多い時間帯ならば、数分に1本の間隔で電車を走らせている。そんな芸当が可能なのは、乗客の大多数がテキパキと動ける世代だからである。
最近、電車内には高齢者が増えてきた印象を持つが、その高齢者はまだ、こうした「人の流れ」についていける年代である。
だが、乗降に駅員の手助けを要する「高齢化した高齢者」が増えればこうはいかない。過密ダイヤでの運行はできず、もっと余裕のある運行本数へと変えざるを得なくなる。
公共路線バスはなおさらだ。バス停ごとに杖を手にした高齢者が待っているとすれば、いくら低床バスであっても乗り降りに時間がかかる。スタッフは運転手一人。運転席を離れてサポートに回らなければならないとしたら、バス停ごとの停車時間は長引く。
国交省の「交通政策白書」(2017年版)によれば、乗り合いバスのノンステップ車両の適合率は50.1%(2015年度末現在)だが、三大都市圏以外の地域では32.5%であり、10%前後の県もいくつかある。
国交省は東京圏の主要鉄道路線について平日の遅延状況もまとめているが、2016年度の場合、45路線のうち64.4%にあたる29路線で遅延証明書を月間10日以上発行している。そのうち22路線が「小規模な遅延」(10分以下)が最多であった。
多くは駆け込み乗車と見られるが、先日乗った地下鉄では、杖をついた高齢者が降りる際に転倒し、周囲の乗客に救助されていた。「高齢化した高齢者」が増えれば、こうした事故も増えるだろう。
電車内でも問題は生じる。国交省の「鉄軌道車両のバリアフリー化設備整備状況」(2017年)によれば、車いすスペースのある編成数は、編成総数の73・0%だ。ただ、すべての車両に車いす用のスペースがあるわけではない。
影響はこれ以外にも想定される。駅の表示案内の文字が小さすぎて読めないとか、音声による行き先案内がはっきり聞き取れない人は増えてきている。複雑な構造のターミナル駅では道に迷う高齢者も増えるだろう。電車の乗り間違いも多く出てこよう。
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