『服を買うなら、捨てなさい』でおなじみの人気スタイリスト地曳いく子さんと、映画ジャーナリスト立田敦子さんの最新刊『おしゃれも人生も映画から』が発売になりました。30年来の旧友である女性二人が影響を受けた映画について語り尽くした1冊です。今回は、「永遠のスタイルを提案した女優たち」について本文から抜粋しお届けします!
女優とファッションの関係は、切っても切れない
立田 女優とファッションの関係は、切っても切れないと思うんですけど、スクリーンの中のファッションアイコンといえば、やはりオードリー・ヘップバーン。ユベール・ド・ジバンシィを発掘して、デザイナーによって自分のスタイルを作り上げた最初の女優でしょ。
地曳 ヘップバーンは、作られたスター。『麗しのサブリナ』で、サブリナパンツやバレエシューズを流行らせたり、おしゃれなんだけど、やっぱり男に見初められる役、というのが残念です。しかも実は太いアイラインとかファンデーション厚塗りとか、濃いメイクだしね。まあ、あの時代はそうやって生きるしかなかったのでしょうね。そう思うと、『黒衣の花嫁』のジャンヌ・モローは、すごかったですね。
憧れの“ファム・ファタール”
立田 結婚式で婚約者を殺された花嫁が、5人の犯人たちをひとりずつ追いつめ、殺していくというサスペンス。女性を描くことでは天才といわれるフランソワ・トリュフォー監督だけあって、女の怖い部分も知り尽くしていますね。一途な愛を奪われただけに、その恨みも大きい。
衣装は、当時モローが交際していたピエール・カルダンが手がけていますね。モローは、恋多き女。彼に一目惚れしたモローは、カルダンがホモセクシャルと知っていても、自分のものにしたかった。フランス映画の〝ファム・ファタール〟と呼ばれたモローらしいですね。結局、5年くらいで別れていますが、フランス映画史に名を刻む〝ファム・ファタール〟であるモローらしい。
地曳 あの時代は本当にそんな生き方に憧れましたね。「私も大人になったらファム・ファタールになるんだ!」なんてね。まあ映画の中だけのオンナだったんですけれど、ほらまだ私若かったし、世間を知らなかったから。今考えたら結構面倒で迷惑な女たちですよね?
立田 あんまり友達にはなりたくないですね(笑)。ジャンヌ・モローと並ぶ応年の大女優カトリーヌ・ドヌーヴのファッションは、いく子さんはお好きですか?
地曳 『シェルブールの雨傘』とか本当に好きで憧れました。フレンチ・コンサバスタイルですね。でも私アジア人だし、金髪じゃなかったから無理でした(笑)。
年を重ねてもかっこいい 引退知らずの女優たち
立田 モローやドヌーヴのように、女優として最後まで現役ではなかったけれど、ブリジット・バルドーも一世を風靡しましたね。夫だったロジェ・ヴァディム監督の『素直な悪女』で大ブレイクしましたが、彼女の場合は、ファッションアイコンというだけでなく、セックスシンボルでもありました。無名時代に、カンヌ国際映画祭に二人揃ってきて、海辺で勝手に撮影会を開いたりしたのは有名な話。今だったら、SNSの女王になっていたかもしれません(笑)。
地曳 ブリジット・バルドー! BBですね。ドヌーブと二大フランス美人女優だった彼女は、後年、21世紀になっても同じスタイルをキープし続けようとするドヌーヴと相反して、歳やシワなんか気にしない動物愛護ナチュラルおばさまに変貌を遂げたところが潔い、というか面白いですよね。かつてのセックスシンボルがしわくちゃなナチュラルおばさん!
立田 同じヴァディム監督が、やはりセックスシンボルとしてスターにしたのが、アメリカの女優ジェーン・フォンダでしたね。こちらは引退知らず。
地曳 ジェーン・フォンダこそ、スーパーウーマン! エロいSF映画『バーバレラ』で見せつけたセクシーな肢体、忘れられません。そんな彼女は、今でもNetflixのドラマで活躍中。新しい時代の「かっこいいおばあちゃん」のアイコンです。
<新刊案内>
『おしゃれも人生も映画から』
著者 地曳いく子/立田敦子 中央公論新社 1300円(税別)
ファッション、恋愛、生き方、
映画はちょっと先の未来を見せてくれる
「映画は、ちょっと先の未来を見せてくれる」という二人が、今こそ観てほしい映画をピックアップ。ファッションと映画という華やかな世界で活躍し続けてきた二人が語る、オシャレ観、恋愛観、人生観は、これからを生きる女性たちに、勇気と希望を与えてくれます。
トレンドの最前線にいるハリウッド女優の話や、リアル女子の手本となったファッションアイテムについてなど、女性が気になるポイントも登場。「もう一度映画を観てみたい」と思える1冊。
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