米倉涼子さんが、過去に観た映画を紹介するアーカイブ コレクション。
そのときに観た映画から、米倉さんの生き方、価値観が垣間見えます。

Bleecker Street Media / Photofest / ゼータイメージ

主演は私が昔から大好きなアル・パチーノ。あまりグッとくる作品がなかった時期もありましたが、これは最高! 長年活躍し続ける俳優、アル・パチーノではなく、ダニー・コリンズというミュージシャンその人にしか見えない、さりげない熱演を見せてくれます。

絶頂期を過ぎて何年も新作を作っていないミュージシャンのもとに43年遅れでジョン・レノンから届いた、新人だった頃のダニーへの手紙。その誠実な手紙に励まされるように、ダニーは新しい一歩を踏み出していきます。

ダメな男かもしれないけれどチャーミングでセクシーで、ヘンなファッシ ョンでもかっこいい。女の人の口説き方からふとしたときの仕草まで、本当に素敵なんですよね。
ずっと会っていなかった息子一家との切ない物語も描かれますが、アル・パチーノが明るく演じる分、その悲しさが伝わってきました。

息子の妻を演じたジェニファー・ガーナーや、ダニーが滞在するホテルの支配人役のアネット・ベニングなど、女優陣の名演も心に響きます。劇中で使われているジョン・レノンの楽曲はよく知らない私でも楽しめた、音楽を通してひとりの男の人生を描いた作品。今年のナンバー1 に輝きそうです。

『Dearダニー 君へのうた』
往年のヒット曲で食いつなぎ、何年も曲作りをしていないミュージシャンのダニ ー。派手だが虚しい毎日を送っているダニーのもとに、ジョン・レノンからの手紙が届く。それは成功への不安を語るデビュー当時のダニーのインタビューを読んだジョンが、 43年前に書いたものだった。劇中で9曲ものジョンの歌が使用された、実話をもとにした感動作。

取材・文/細谷美香
このページは、女性誌「FRaU」(2015年)に掲載された
「エンタメPR会社 オフィス・ヨネクラ」を加筆、修正したものです。