そこで、夫婦の会話に戻ってみましょう。夫は「今日、こんなことがあってさ〜」という何気ない会話を、「オチのない話」と判断し、ろくに共感してくれない。しかも、夫からは「今日会社でこんなことがあってさ」というささやかな“知のプレゼント”もない。だから、妻は夫との会話に物足りなさを感じてしまうわけなのです。
夫が「女友達」のように接して
共感してくれたら……
『妻のトリセツ』では、夫へのアドバイスとして、「妻の女友達のように接することを心がけよう」と提案しています。「オチのない、ささやかな体験話(小さな愚痴や小さな発見)」をプレゼントし、相手からそれがあったときは、しっかりと共感して、相手のストレスを解いてやることだ、と具体的な方法も紹介。まずはひたすら共感することから始めることを勧め、たとえ心から本当に共感できない内容だったとしても、共感するフリでもいいと指南しています。
夫が日頃から「女友達」のように接し、共感し続けてくれることで、妻の心には「夫は優しく寄り添ってくれた」という記憶が残り、その後、多少気が利かないことをしたとしても、「冷たく見えるけど、実は優しいところもある」といいようにインプットされるというのです。
「共感のフリだけされても……」と思うかもしれませんが、何気ない会話すらしてくれなかったり、無神経なことを言われたり、「それって、どうせオチはないんでしょう?」と言われるよりはるかにマシな気もします。夫の「共感のフリ」によって、妻の心に「優しく寄り添ってくれた」という記憶が残るのであれば、悪い話ではありません。今晩にでも、夫と向き合って男性脳と女性脳の違いについて説明し、「解決策を求めているんじゃなくて、共感してほしいだけ」とお願いすれば、夫婦関係がほんの少しだけ、いい方向に変わるかもしれません。
<著書紹介>
『妻のトリセツ』
黒川 伊保子 著 800円(税別) 講談社
理不尽な妻との上手な付き合い方とは。
女性脳の仕組みを知って戦略を立てよう!
妻が怖いという夫が増えている。ひとこと言えば10倍返し。ついでに10年前のことまで蒸し返す。いつも不機嫌で、理由もなく突然怒り出す。人格を否定するような言葉をぶつけてくる。夫は怒りの弾丸に撃たれつづけ、抗う気さえ失ってしまう。
夫からすれば甚だ危険で、理不尽な妻の怒りだが、実はこれ、夫とのきずなを求める気持ちの強さゆえなのである(俄には信じ難いが)。本書は、脳科学の立場から女性脳の仕組みを前提に妻の不機嫌や怒りの理由を解説し、夫側からの対策をまとめた、妻の取扱説明書である。
「妻が怖い」「妻の顔色ばかりうかがってしまう」「妻から逃げたい」という世の夫たちが、家庭に平穏を取り戻すために必読の一冊でもある。
脳科学専門家 黒川 伊保子
長野県生まれ。奈良女子大学理学部物理学科を卒業。富士通ソーシアルサイエンスラボラトリで人工知能の研究に従事したのち、株式会社感性リサーチを設立。世界初の語感分析法を開発し、多くの商品名やマーケティング戦略を手がけ大ヒットに導く。また、人間の思考や行動をユーモラスに語る筆致によりベストセラーも多く、特に『英雄の書』『女は覚悟を決めなさい』『母脳』(ともにポプラ社)の「英雄三部作」は、脳科学をもとに人生を切り開く方法をわかりやすく説くことで多くの世代から大反響を得ている。近著に『前向きに生きるなんてばかばかしい』(マガジンハウス)、『英雄の書』を文体から変え、加筆修正した『英雄の書 すべての失敗は脳を成長させる』(ポプラ新書)。
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