このところキャッシュレスの是非に関する議論を目にする機会が増えています。日本は世界でも突出した現金大国として知られていますが、銀行は次々と店舗やATMを廃止している状況です。いったい何が起こっているのでしょうか。

現在、日本には約20万台のATMが稼働しています。どこに行ってもATMがありますから、現金が手に入らず途方に暮れるということはほとんどありませんでした。しかし、この便利な環境は今だけのものとなりつつあります。

ATM網の維持には実は途方もないコストがかかっています。金融機関はATMに対して年間2兆円もお金をかけているのですが、この負担が経営を圧迫し始めているのです。小売店や飲食店の店舗においても、現金の取り扱いや管理に多くの人材が必要となることから、人手不足に拍車がかかっています。

こうした状況を受けて政府はキャッシュレス化の方針を強く打ち出しており、クレジットカードや電子マネーへのシフトを急ピッチで進めたい意向です。

キャッシュレス化については様々な意見があります。若い世代の人はキャッシュレス派が多いようですが、ジャーナリストの鳥越俊太郎氏のように「私たちは現金世代です。支払いはキャッシュじゃないと落ち着かない」と現金の存続を強く訴える人もいます。

日本は先進国としては世界でも希に見る現金大国なのですが、各国がこれまでキャッシュレス化を進めてきた理由は「利便性の追求」でした。しかしながら、今の日本が直面しているのは、利便性の問題ではありません。日本経済の基礎体力が弱くなっており、多額のコストがかかる現金決済を維持する余裕がなくなってしまったというのが本当のところです。

非常に残念なことですが、これが政府がキャッシュレス化を推進する理由ですから、私たちにはあまり選択肢がないと考えた方がよいでしょう。

現金派の人にとってはいろいろと言いたいことがあるかしれませんが、キャッシュレス化が不可避ということであれば、むしろそれに合わせて生活を変えた方が合理的です。実際、キャッシュレス決済には現金にはないメリットがたくさんあります。

 
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