講談社刊『世界の名酒事典』が、2018年のボージョレ・ヌーヴォー解禁日である11月15日(木)発売の最新号で、創刊40周年を迎えます。
ウイスキーからワインまで、世界中の名酒情報を網羅した国内唯一の事典として、プロフェッショナルをはじめ、酒を愛する多くの読者に愛されてきました。
日本の酒業界を40年にわたって追ってきた『世界の名酒事典』。その最新号では、記念特集として、創刊号の復刻記事を一部再録しています。
今となっては貴重な、創刊当時の酒事情から、誰もが一度は耳にしたことのある、世界最高峰のワイン「ロマネ・コンティ」が当時どれくらいの価格だったのか、ご紹介します。
 

語る人多くして、飲む人稀なり。ロマネ・コンティはなぜ高い?

 

『世界の名酒事典』の熱心な読者の方には、まさに釈迦に説法ですが。ロマネ・コンティは、とてつもなく芳醇で長期の熟成能力をもつ傑出したワイン。
ぶどう畑の面積は1.8ヘクタール。年産本数は6000本ほど。たとえばシャトー・ラフィットの100ヘクタール、年産本数20万本と比べると、その生産量の少なさにあらためて驚かされます。
だけど、希少だから、傑出した「価値」があるから、というだけであの値段になるわけではありません。
「どんなに高くても、『世界一のワイン』を飲んでみたい」と考える人々が生産量を遙かに超えて存在すること。
要するに高い需要に対して、供給量が極端に少ないこと--それがロマネ・コンティの値段の秘密(というかモノの値段のごくありきたりな真実)。
 

40年前のお酒の世界。落差に愕然。値段に驚く!


さて、そのロマネ・コンティ、40年前はいったいいくらで買うことができたでしょう!? 創刊号の158ページに掲載。輸入元は高島屋。

『世界の名酒事典』創刊号より

今や、ネットショップでは最新ヴィンテージでも百ン十万円。それが当時はなんと5万円でした。
この71年ヴィンテージは、ブロードベント(クリスティーのオークショニア)の評価は5つ星……ああ、買っておけばよかった!
ちなみに、『世界の名酒事典』創刊の1978年と現在の物価を比べると約2倍だそうですが、ロマネ・コンティはなんと30倍にもなっています。
 

ロマネ・コンティはいつから高くなったのか?


それからしばらくは、10万円以下のヴィンテージが続きます。ブルゴーニュの70年代はおおむね不作で、例外が71年、76年、78年。なかでも78年物の評価は高く、それが「84-85年版」に登場します。これがはえある初の10万円越え物件で、13万円! それでもまだこの頃は、13万円でした。

『世界の名酒事典』1984-85年版より

ロマネ・コンティの正規代理店は、「高島屋」「サントリー」、サントリーのファインワイン部門の子会社「ファインズ」へと移っていきました。
そして「89年版」で正規代理店(当時は高島屋)以外のインポーターのものが初めて登場します。値段も12万円台から21万円台とさまざま。

『世界の名酒事典』1989年版より

背景には、ECなどによる日本の酒類市場開放への圧力がありました。並行輸入品が急増していった時代でした。正規代理店が扱う最新ヴィンテージは、その後も10万~16万円で推移していきます。ただ、その価格が確認できるのは「2002年版」まで。「2003年版」から当時の正規代理店サントリーの価格表示が、「オープン価格」になってしまうからです。それ以降、最新ヴィンテージの価格推移は『世界の名酒事典』上でも追跡不可能になりました。
とはいえ、「いつからそんなに高くなったのか?」という観点でいえば、50万円越え、100万円超え物件の登場が一つの指標になるかと思います。50万円超えものは、1996年11月発行の「97年版」に初登場しています。

『世界の名酒事典』1997年版より

やがて時代は、21世紀へと進み、その21世紀最初の年、つまり2001年刊行の「2002年版」に、100万円超えのロマネ・コンティが初めて登場します。78・85年ヴィンテージがともに120万円でした。

『世界の名酒事典』2001年版より


『世界の名酒事典』のどの号を見ても、最も高価な赤ワインはロマネ・コンティ。こうして価格推移を見てくると、市場の拡大とともに希少性が高まっていったこともわかります。創刊当時は高嶺の花とはいえ、手が出ないわけではない価格。その高騰ぶりに驚くとともに、タイムマシンがあったなら……と誰もが思ってしまいますね。

 
 

『世界の名酒事典 2019年版』

著者 編集/講談社 3500円(税抜)

ウイスキーからワインまでを網羅した国内唯一の酒の事典。
圧倒的な情報量と、クオリティの高い撮り下ろしボトル写真、国内随一の名酒カタログとして、プロフェッショナルから愛酒家まで、多くの読者に愛されてきました。2019年度版は創刊40周年記念号。

最強の酒のプロが厳選した2500本のカタログに、山本博、土屋守、葉山考太郎による「酒仙鼎談」や、創刊号再録で振り返る40年前の酒事情、日本酒&焼酎の最新事情など、記念特集も充実。

• 『世界の名酒事典』Facebookページ:https://www.facebook.com/meishujiten/

『世界の名酒事典』のほか、料理、美容・健康、ファッション情報など講談社くらしの本からの記事はこちらからも読むことができます。
講談社くらしの本はこちら>>

構成/世界の名酒事典

出典元:https://kurashinohon.jp/810.html

・第2回「マニア垂涎の最高級ワインの価格で見る、40年前の国内ワイン市場」はこちら>>

・第3回「ボルドーの価格変動にみる、世界のワイン市場が新時代に突入した瞬間」は11月28日公開予定です。