先日、シンガポールで、壊れてしまった家電を修理してもらうため、ある企業のカスタマーケアに行ってきました。日本は修理に出したり受け取ったりするのも宅配を使えることが多いと思いますが、シンガポールは顧客が持ち込む方式が中心な気がします。

モノによっては車でしか運べず、修理に出すのと受け取りに行くので二往復が必要で配車サービスなどを使っても4000円くらいかかる。片道はバスで行きましたが新しいの買ったほうが早いかな……と思ったくらいですが、そこで発見もありました。

こんな貼り紙があったのです。

日本企業は今こそ「お客様は神様」を脱すべき_img0
 

We CARE about you as we CARE about our staff.
Kindly treat them as you want to be treated. (お客様も社員も私たちにとっては同じくらい大事です。あなたが扱われたいと思うように扱ってください)


シンガポールでは、電車の中などでも乗務員への暴力や暴言に警鐘を鳴らす貼り紙を見たことがあります。これを貼らないといけないような言動が見られるとも捉えられ、だとすれば残念ではあります。

が、でも日本の「お客様は神様です」文化で、顧客からの暴言に耐えているカスタマーサービスが多いことを踏まえると、企業側がこのような姿勢を明示することは意義があるように感じました。

少し前に日本で国内線の飛行機に乗った時、驚くような場面に遭遇しました。ビジネスクラスに座ろうとしていた50代くらいのスーツを着た男性客が、CAさんに「あんたがおかしいんだよ、顔もおかしいけどね、全部おかしいんだよ」と突っかかっていたのです。

何があったか知りませんが、少なくとも顔は関係ない。何か問題があったのならそのことについて議論すべきで、相手の容姿について侮辱するなんて、どんなビジネスクラス人材なのでしょう。割って入りたい気持ちでしたが、私も子供を連れていて手一杯でしたし、CAさん達を余計に困らせそうだったからやめました。

言われたCA女性は引きつった、しかし満面の笑みで「かしこまりました」と答えていました。おそらくそこにある程度慣れもあるであろう様子に逆に悲しくなりました。

社会学者のアーリー・ラッセル・ホックシールドは接客業などのこうした感情をコントロールして笑顔を振りまくような労働を「感情労働」と呼び、ストレスや精神的負荷が大きいことを指摘しています。でも本来、こんな言動にまでニコニコしていないといけないことまでやらないといけないことが「仕事」であるわけがない。

航空会社は、従業員を傷つけるような言動をする顧客はご利用をお断りしますくらいの対応をしてもいいのではと思います。「お客様も社員も私たちにとっては同じくらい大事です。あなたが扱われたいと思うように扱ってください」。日本のハラッサーお客様にも読ませたい一文です。