米倉涼子さんが見た、最新のおすすめエンタメ情報をお届けします。

『アリー/ スター誕生』 配給:ワーナー・ブラザース映画 ©2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC.

ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンのライブに行ったこともあるくらい、大好きなレディー・ガガ。
楽しみにしていた彼女の映画初主演作『アリー/スター誕生』をひと足お先に観てきたので、見どころを紹介したいと思います。映画がはじまって結構早めに泣いちゃったほど、やっぱり彼女の歌声は素晴らしかった! 
実は最初、ガガの実話と勘違いしていて、あれ? お父さんってドライバーじゃなくて、裕福な家のお嬢さんだったよね? なんて思っていたのですが、それほどアリー役にハマっていたということかも! 
世界的なシンガーのジャクソンがアリーの才能を見出すきっかけになった曲『La Vie en Rose』にも引き込まれたし、ふたりで歌う『First Stop, Arizona』も、アリーが作った『Shallow』も全部ジーンときました。

ずっとドラマの撮影だったので、久しぶりに試写室で映画を。もう一度、大きなスクリーンで観たいです!

歌唱力はもちろん、このふたりは本当に恋をしているに違いないと信じさせてくれるお芝居の力も感じました。
きっとガガはまだ色んな役を演じていないから、ものすごくまっすぐにアリーという役に向き合ったんでしょうね。こんなにも情熱的な物語なら、裸になる意味もあるなぁ、なんて思ったりもしました。
現代風なアレンジがされているとはいえ、何度もリメイクされている作品ということは、長く愛される理由がある物語ということですよね。女の人が成功して男が落ちぶれていく関係って現実的にもありそうだし、カップルや夫婦のパワーバランスって難しい。
特にそう感じたのは、アリーが自分がスターになっていくことに対して「嫉妬しているの?」ってジャクソンに聞くシーン。
彼は絶対に嫉妬しているんだけど、言葉ではなくて彼女の顔にケーキのクリームをなすりつけるっていう行動で気持ちを表現するんです。彼女が成功していくのはうれしいのにパフォーマーとしてはどこかライバル心もあって、自分から遠い場所に行ってしまうことに対しては寂しくて悔しい気持ちもある……。
セリフで語るシーンではないからこそグッときて、ボロボロ泣いてしまいました。

 

アリーの大きなビルボードを見ながら、ジャクソンがステージに向かう前の彼女に「本気で魂を込めてやれ。適当にやるな」と語るシーンも素敵でした。
スターになっている人にとっても大事な精神だし、どの仕事にも通じることだな、って。
ピアノと歌だけだったアリーにダンスを踊らせることで路線変更して売れっ子にするマネージャーは、この物語のなかで唯一のヒール的な役割を担っているキャラクター。
このほかにもアリーに夢を託す父親や、ジャクソンとすれ違っていくお兄さんなど、脇のキャラクターのドラマも丁寧に描かれています。

 

監督、主演のブラッドリー・クーパーは今まで『ハング・オーバー!』シリーズや『世界にひとつのプレイブック』『アメリカン・ハッスル』も観ていたけど、あんまりタイプじゃないんだよな~と思っていたんです(笑)。
でも今回は汚い感じのヘアスタイルやひげの感じがリアルで、歌も本当に上手だった! ギターとピアノの練習をして、6ヵ月間、週に5日間も歌のレッスンをしたそうで、その環境にうらやましさも感じました。
なかなか日本ではこれだけの準備期間をとれないので……。
これからはヒュー・ジャックマンみたいにステージで歌ったりすることもありそう! と楽しみにしています。
それにしても監督、主演の両方をやるとき、キスシーンのOKはどうやって出すんでしょう!? 役者としては気持ちが入ったものがOKだけど、監督としてはもっと客観的に見てOKを出すのかな……? 気になったことのひとつです(笑)。 
久しぶりに“映画を観た!”っていう満足感があって、余韻に浸っていたくなる映画。今年観た中で、一番好きな作品です。

映画を観たあと、この連載のスタッフと早めの忘年会を。大好きなお肉とワインで、映画の話で盛り上がりました。

 

 

『アリー/ スター誕生』
1937年『スタア誕生』以来、何度もリメイクされている今作。ブラッドリー・クーパー監督・主演、そして映画初主演のレディー・ガガの熱演で、ゴールデン・グローブ賞でも5部門ノミネートされるなど、世界中で話題になっている。
歌手を夢みるアリーは小さなバーで歌いながら日々を過ごしていたが、ある日、世界的ロックスターのジャクソンと出会い、ショービジネスの世界に。愛し合うジャクソンとともに一気にスターダムを駆け上がっていくが、次第に自分を見失っていく……。