東京都世田谷区。駒沢大学駅を降りて玉川通りを西へ。駒沢の交差点を世田谷方面に曲がるとほどなくして、可愛らしい教会が現れます。いま、Twitterで一般のアカウントながら7万7000を超えるフォロワーを集め、独自のゆるい世界観で聖書やキリスト教について積極的にツイートし大人気となっている、上馬キリスト教会です。
知っているようで知らないキリスト教の世界を、面白おかしく切り取ったツイートは話題を呼び、「おもしろい!」「(意外と)勉強になる!」「元気が出る!」と一躍人気者に。数々のメディアにも取り上げられ、2017年のクリスマスには150人を超える「初めて教会に来る人」が押し寄せるなど、その勢いはとどまるところを知りません。そして、2018年のクリスマスを前に、初の著書『上馬キリスト教会の世界一ゆるい聖書入門』を刊行しました。
その大人気アカウント「上馬キリスト教会」(@kamiumach)の「中の人」は、牧師ではなく、一般の信徒で、「まじめ担当」と「ふざけ担当」のふたり。「まじめ担当」として本をメインで執筆した、横坂剛比古さんにお話しをうかがいました。
――『上馬キリスト教会の世界一ゆるい聖書入門』の刊行にあたっては、大人気コミック『聖☆おにいさん』とのコラボも実現するなど、いまや押しも押されもせぬ人気者ですが、どんな思いで「Twitter伝道」を始めたのですか?
最初はふざけ担当が仕事でとある公式アカウントの運用を任されることになって、「なんかいい練習台はないかな」っていうんで、じゃあ教会のアカウントを作って練習してみようか? みたいな、本当に軽いノリだったんです。僕が教会のホームページを担当していたので、一緒にやることに。そんなんですから、当初は割とこっそりやっていて、「教会に紫陽花の花が咲きました」とか、当たり障りのないことばかりつぶやいていて、「なんだか面白くないねー」って(笑)。
でもふたりとも、もともと遊び好きというか、イタズラ好きなもので、だんだんゆるいことをつぶやきはじめて。
スタンスはお気楽だけど……「実はものすごく準備してツイートしてます」
――人気が出て、注目を集めて、どんな変化がありましたか?
最初のうちは、多少の横槍が入ることもありました。「くだらないことやると教会の名前が落ちるからやめて!」とか。でもそういう声がちらほら聞こえてきた頃に、教会に人が来はじめたんです。それで「これも神様の業かもしれない」というムードになった。
――ここまで人気になると、プレッシャーもありそうですが。
プレッシャーは意外とないんです。面白いことは常に考えてますし(笑)、「神様がやってくださるだろう」という感じで、割と気楽にやっています。炎上すると疲れますけど(笑)。
ただプレッシャーはないですけど、みんなカンタンだと思ってるんですよねTwitterを。「ちょこちょこ片手間にやっていて、そんなに人が増えるのか」って。僕らは「楽して伝道してます」というイメージを強調してますけど、実はその裏で1日2~3時間を費やしたりしてるんです(笑)。企画会議をして、「○○の日」があるから、それをネタにこう仕掛けよう、みたいな地道な作業を。
サッカーのワールドカップのときは、日本と対戦するチームのことを試合の3日前くらいから調べて、「この国はクリスチャンが何%の国」とか情報を仕入れておいてネタにしたり。どっちのチームが勝ってもいいようにツイートを二つ用意しておいて、試合が決まったと同時にアップしたり。ニュースサイトよりも速い、と評判になりました。
うちの教会でなくても、 もっともっと気軽に教会に来て欲しい
――Twitterをきっかけに教会にたくさんの人が来るようになりました。今年のクリスマスはどうなりそうですか?
教会が人で埋まっているのを見て、「ああ神様ってすごいなあ」って思うんです。自分たちがやったという気はあまりしていなくて。今年のクリスマスはさらにたくさんの人が集まってくれそうですけど、なんとかなるんじゃないかな。なんとかならなかったらその時考えようみたいな(笑)。
礼拝の告知なんかはしてますけど、「うちの教会に人が来て欲しい」という気持ちはもともとないんです。だって7万人のフォロワーがいて、上馬近辺に数千人がいるとして、みんな来たところで入れないわけですし、そもそも物理的に来られない人がもっといるわけで、それぞれ近くの教会に行ってくれればいいという思いでいるんです。
――確かに、教会は気軽に訪れにくいですね
この前「ふざけ担当」が言ってましたけど、「みんなイタリア行ったら教会に行くじゃん」って。外国の人も、京都に行ったらお寺に行くみたいな。そういう感覚で教会に行ってもいいんじゃないかって。日本は観光名所になるような教会は少ないですけど……うちの教会は最近ちょっと観光地化していて。通りかかった人が、Twitterで「前を通った」って写真をアップしたり。それで、「記念写真用のパネルとか用意しましょうよ」と提案したら牧師に怒られました(笑)。
でも、そんな気軽な感覚で教会に来て欲しい。本にも書きましたけど、教会に来たからといって、強引に勧誘されることはありませんから。
「信仰して!」とか大げさなことじゃなくて、教会や、聖書、そして僕たちクリスチャンを、ふつうの存在として感じてもらえたらなって思ってやっているんです。
『上馬キリスト教会の世界一ゆるい聖書入門』
著者 上馬キリスト教会 1300円(税抜)講談社
おもしろキャラ、とほほエピソード満載! Twitterで大人気のゆるアカウント「上馬キリスト教会」が、聖書とキリスト教の世界を、ほんとうにゆる~く、ざっくりと紹介します!
ノンクリスチャンが抱きがちなソボクな疑問、教会で飛び交う謎のことば、名画に描かれた聖書の名シーンの数々……読めば「目からウロコが落ちる!」(←聖書由来!)、きっと誰かに話したくなる、老若男女だれでも気軽に楽しめる入門書です!
『上馬キリスト教会の世界一ゆるい聖書入門』のほか、料理、美容・健康、ファッション情報など講談社くらしの本からの記事はこちらからも読むことができます。
講談社くらしの本はこちら>>
上馬キリスト教会(かみうまきりすときょうかい)
東京都世田谷区駒沢にあるメソジスト系単立教会。2015年2月にスタートしたtwitterでの伝道活動が人気を呼び、一般アカウントにもかかわらずフォロワー7万人を超える人気アカウントに。キリスト教や聖書の世界をおもしろおかしく切り取ったつぶやきが話題を呼び、2017年のクリスマスには150人を超える「初めて教会に来る人」が押し寄せるなど、大人気に。「中の人」は、一般の信徒で、「まじめ担当」「ふざけ担当」の二人。twitterアカウント(@kamiumach)
横坂 剛比古(よこさか たけひこ)
通称マロ、あるいはマロさん。上馬キリスト教会の一般教会員。上馬キリスト教会twitterアカウントの「まじめ担当」。1979年、東京都生まれ。慶応義塾大学文学部哲学科倫理学専攻卒。専門は宗教倫理学。バークリー音楽大学 CWP卒(Professional Diploma)。現在は宗教法人専門の行政書士としてキリスト教会をはじめ、お寺や神社の法務サポートを行いつつ、異宗教間コミュニケーションについての研究や実践も行っている。
写真/牧田健太郎
出典元/https://kurashinohon.jp/842.html
第2回「ツイッターで大人気!上馬キリスト教会の聖書入門でキリスト教が身近に」はこちら>>
第3回「クリスマスって何の日?「イエス様の誕生日ではなかった」大いなるカン違い」はこちら>>
第4回「著書も大反響!上馬キリスト教会が教えるイエス様の弟子「とほほエピソード」」はこちら>>
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