米倉涼子さんが、過去に観た映画を紹介するアーカイブ コレクション。
そのときに観た映画から、米倉さんの生き方、価値観が垣間見えます。

【シネマコレクション・46】<br />自然災害の壮絶な被害から立ち直る家族の実話『インポッシブル』_img0
Summit Entertainment / Photofest / ゼータイメージ

ロンドンで行われた『ダイアナ』のプレミア上映会でお会いしたナオミ・ワッツは、思っていたよりも華奢で、とても気さくな方! モデルとして日本に滞在していた頃のことや、プロモーションで東京を訪れたときのことを普通に話してくれて、ハリウッド女優よ!という気取りがまったくないんです。
その後、彼女が主演している『インポッシブル』を観て、『ダイアナ』とのたたずまいの違いに驚かされました。

スマトラ島で津波に巻き込まれた女性を演じているのですが、ナオミ・ワッツは慎ましくて強い母親になりきっている。その役作りの素晴らしさと、きっと自分に自信があるんだろうなと感じさせる堂々たる存在感に圧倒されました。

波に飲まれて脚に大けがを負いながらも子どもたちを捜すシーンや、病院のベッドの上で口の中から藻のような紐状のものを吐き出すシーン……、いくつもの体当たりの演技が、津波の壮絶さを伝えてくれています。
日本人にとってはどうしても東日本大震災を思い起こさせる題材だし、もしかしたら実際にはもっと大変なことが起こっていたのかもしれません。

それでも、充電の残った貴重な携帯電話を貸しあ ったり、行方不明者を捜したり、ぎりぎりの状況のなかで見えてくる人間の善意や、過酷な体験を通して強くなっていく家族の絆と息子たちの成長を描き出したこの映画は、観てよかったと思える作品でした。

『インポッシブル』
リゾート地でクリスマス休暇を過ごしていた、ベネット夫妻と3人の幼い息子たち。巨大津波に襲われた彼らは濁流に飲まれ、離れ離れになってしまうが……。スマトラ島沖地震に巻き込まれながらも懸命に生き抜いた家族の、真実の物語を映画化。

取材・文/細谷美香
このページは、女性誌「FRaU」(2013年)に掲載された
「エンタメPR会社 オフィス・ヨネクラ」を加筆、修正したものです。