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【米倉涼子の新作映画レビュー】アカデミー賞作品賞『グリーンブック』バディものが胸に響く_img0
『グリーンブック』 全国公開中  配給:GAGA  © 2018 UNIVERSAL STUDIOS AND STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC. All Rights Reserved.

今年のアカデミー賞で作品賞を受賞した『グリーンブック』、とても素敵な映画でした! 対照的な性格の白人と黒人のコンビと聞いて『最強のふたり』みたいな映画かな? と思っていたら、また違うかわいらしさやいじらしさがあって、これが実話だとは信じられないほどいい話です。

エリート教育を受けた黒人のピアニスト、ドクター・シャーリーと運転手として雇われたイタリア系の用心棒、トニーはファッションからして正反対。最初にトニーがドクター・シャーリーの部屋に招き入れられたシーンでは、きらびやかな服と強烈なインテリアを見て、この人は一体何者なの!? とびっくりしながら、これから何がはじまるんだろうとワクワクする気持ちになりました。

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ふたりは黒人が利用できる施設を記した旅行ガイド「グリーンブック」を手に南部へのツアーに出かけるのですが、行く先々で黒人への差別や偏見に直面することになります。
ドクター・シャーリーに用意された楽屋が狭い物置で、ゲストでありながらレストランにも入れない様子に心が痛みました。舞台『風と共に去りぬ』に出演したときにも感じましたが、南部は黒人差別の色濃い土地。きっとこの映画に描かれていること以外にも、辛い経験をたくさんしたんじゃないかな……。
白人のいるバーでお札を使ったドクター・シャーリーが袋叩きになってトニーに叱られるシーンを見ながら、アメリカを車で移動したときに100ドル札を出したら現地の友人に「気をつけて」と言われたことを思い出しました。
どうしても日本人は治安の悪さや差別について鈍感なところがあるから、感覚として理解するのは難しい。でもこの映画はエピソードをひとつひとつ積み重ねて、その空気を伝えてくれます。

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そして何よりも素晴らしいのは、重い題材をユーモアとともに描いているところ! 笑いながらハッとして、考えさせてくれる。そんな瞬間がたくさんありました。
全然タイプの違うふたりが少しずつ近づいて馴染んでいく過程の描写もさりげなくて、彼らがフライドチキンを食べるシーンもチャーミング。ドクター・シャーリーが、トニーから奥さんへの手紙の文面を考えてあげるところも大好きなシーンです。男性ふたりの関係性を描く映画って、どうしてこんなにも胸を打つんでしょうね。

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ヴィゴ・モーテンセンはイタリア語訛りのレッスンをかなりしたのかもしれませんね。太り方も話し方も、こういうイタリア系のアメリカ人、いるいる! という感じ。旅の途中、自分でシャツをお洗濯する姿すら何だかかわいかった(笑)。
エンディングにはイタリア系ファミリーのクリスマスの様子が観られる楽しさも。この映画について語っているといくつもいいシーンが浮かんできて、また観たくなります。

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『グリーンブック』
1962年、ニューヨークの一流ナイトクラブの用心棒であるトニー・リップは、黒人ピアニストのドクター・シャーリーの運転手としてスカウトされる。カーネギーホールを住処とし、ホワイトハウスでも演奏したほどのドクター・シャーリーは、なぜか人種差別が残る南部での演奏ツアーを目論んでいた。その本当の目的とは? 本年度アカデミー賞作品賞を受賞した感動の実話。トニーとシャーリーを演じるのは、アカデミー賞に2度ノミネートされたヴィゴ・モーテンセンと同賞を受賞したマハーシャラ・アリの演技派俳優。監督は『メリーに首ったけ』などコメディで知られるピーター・ファレリー。