米倉涼子さんが、過去に観た映画を紹介するアーカイブ コレクション。
そのときに観た映画から、米倉さんの生き方、価値観が垣間見えます。

【シネマコレクション・48】<br />HIV感染者の命がけの闘いを描いた実話『ダラス・バイヤーズクラブ』_img0
Focus Features / Photofest / ゼータイメージ

21キロも減量したマシュー・マコノヒーに圧倒される『ダラス・バイヤーズクラブ』。
男性ストリップの世界を描いた『マジック・マイク』ではあれだけ体を鍛えていた彼がこんな体になるなんて、ほとんど殺人的ともいえるダイエットをしたに違いないんですよね。どんな方法なのか教えてほしい、と思ってしまいました(笑)。

きっとしっかりしたトレーナーがついているはずで、そのあたりはハリウッド映画のうらやましいところ。マシューは薄汚れた’80年代のカウボ ーイになりきっていました。
今よりもずっとエイズに対する誤解や偏見が強かった時代にHIVに感染し、効く薬を求めて国境を越えていく。自分のためにはじめたことがビジネスにつながって、やがて病気を抱えた人たちを救っていく姿を観て、人って生まれ変われるんだなと感じました。

ドラマ『ドクターX~外科医・大門未知子~』で医療機関についていろいろと知る機会がありましたが、この時代から製薬会社との癒着はあったんですね。彼が裏で違法な薬を求めてまで命がけで闘ったのは、医者への怒りゆえか、それとも正義感や生きたいという欲求ゆえだったのか――。
この映画を観ながら、そういえば日本では今、エイズ患者はどれくらいいるんだろう? という問題に思いを馳せました。
実話を映画化して成功した作品には、そういうふうに現実と自分を結び付けてくれる真実味や説得力があるように感じます。

『ダラス・バイヤーズクラブ』
’80年代、HIV陽性によって余命わずかだと告げられたテキサスのカウボーイ。アメリカに認可薬がないことを知り、代替薬を密輸するビジネスをはじめる。実在の人物を演じ切って賞レースを騒がせたのは、旬の俳優マシュー・マコノヒー。決してヒーロー然とはしていない主人公が矛盾に立ち向かい、現実を変えていく姿が胸に迫る。

取材・文/細谷美香
このページは、女性誌「FRaU」(2014年)に掲載された
「エンタメPR会社 オフィス・ヨネクラ」を加筆、修正したものです。