私は20代の後半でサラリーマンをしながらライターの仕事を始めたのですが、その当時はテレビドラマ脚本の仕事をしていて、会社が終わると局に行って会議に出て終電で帰り、ダメ出しされた脚本を翌朝までに書き直す、みたいなサイクルで働いていました。
晩御飯を食べ終わると、「ああ眠いわあ、ちょっとひと眠り」と思ってウトウトしてたら朝、みたいな今日この頃と比べ、20代って恐ろしいほど体力があったんだなあと遠い目になってしまうのですが、その体力をもってしても耐えられなかったのが、私の生き方に対する母の無理解です。
母は専業主婦ではなく、むしろ「パパがやってる会社って実質動かしてるのママでしょ」くらいの働く女性で、にもかかわらず私には「若い女の子がこんな時間まで働くなんてありえない!」「なんだかんだいって女の幸せは結婚!」と私に毎日のように噛みつき、精神的に耐えかねた私は家を出て、そこからほぼ10年の間、母との関わりを断ちました。

「おねがいマイメロディ」はそんな頃、2005年に放送されていたサンリオのアニメです。そこに登場する主人公マイメロちゃんのお母さんの17の名言を集めたクリアファイルが、最近ちょっと話題になっているのだとか。その中のひとつ「女の敵はいつだって女なのよ」を、あえてタイトルにしたこちらの記事は、やや作為がにおうのですが、まあそれは置いといて。私は考えました。マイメロちゃんのお母さんって、いったいおいくつなのかしら?と。

サンリオ公式では「年齢設定はない」のは承知の上、そこをあえて考えてみましょう。
換算は放送当時の2005年から?いえいえ。サザエさんも誕生当時から「永遠の28歳」なので、基準はマイメロちゃんが誕生した1975年。「おねがいマイメロディ」を見ると、マイメロちゃんはやや“赤ちゃん言葉”が残っているので、まあ小学校に上がるか上がらないか……ってことは、あら、私と同世代?ならばお母さんも我が母とほぼ同世代と考えて、昭和十年代半ば前後の生まれでしょうか。

これを裏付けるのがお母さんのビジュアル、特筆すべきは、頭にかぶった「ヘアキャップ」です。ホットカーラー全盛の昭和50年代には、家の中でこういうのかぶっている“かみなりパーマ”のお母さんがたくさんいましたねー。ちなみにお父さんはというと、麦わら帽子にオーバーオール。名言のひとつに「パパは野菜を育てて、ママはパパを育ててるのよ」とありますから、おそらく農業従事者でしょう。

つまりマイメロちゃんのお母さんは、±5年のバッファをみて昭和10年から20年くらいの生まれで、農家に嫁ぎ、森と丘のある土地(マイメロちゃんのプロフィールより)で二人の子供を育てる女性。


こうしたことを踏まえ、17の名言のすべてをチェックしてみると、お母さん、なかなかにカッ飛んだ人です。私がおおお!と思ったのはこちら。
「女の子が気にしているようなことを言うような男は、ぶってもいいのよ」。
いやいや性別がどっちだろうとぶったらアカンがなwwwと突っ込みつつ、私は思います。「女の敵はいつだって女なのよ」という男社会の常套句を言ったのは、もしかしたら時代のせいなんじゃないかしらと。人はどうしたって生きる時代の空気を内面化し、それが自分の考えのように思いこんでしまう部分があるのかもしれません。世代の違いがつくる意見の違いなんて、そんなもの。


さて。80歳をすぎた我が母はと言えば、今も意気軒高。最近は「ボケ防止に」と始めた麻雀が楽しいらしく、年に1度は近所のおばあちゃんたちを束ねて麻雀大会を企画、こぎれいな雀荘を見つけては値段交渉したりしています。そんな母がこの間、ふと漏らしました。「今みたいな時代だったら、私もたぶん結婚していなかったわねえ」。
いやいや困りますから、あなたが結婚してなかったら私産まれてないんで!とツッコミ入れつつ、思います。もしマイメロちゃんのお母さんが、今の時代に生まれていたら。「女の敵は女、なんて言葉は男社会に都合のいい刷り込みなのよ」くらいのこと言ったんじゃないかなあ。