そのタイトルを見ただけで「下衆」としか言いようのない、週刊誌「SPA!」の「ヤレる女子大ランキング」。おーい、おーーい、どこなのー、どこにいるのー、照れないで出てきてー、まともな日本人男性!と全国津々浦々を大捜索したい心境になった私です。

大学の具体名を出してランク付けしたこの記事の、何が最低で何がキモイかを分かりやすくするには、「世間→具体的な大学名」という構図を、「会社→具体的な個人名」に変えてみるといいかもしれません。オフィス内で男たちが自社の「ヤレる女子社員ランキング」を作っている、みたいな。こういうことを喜んでやること自体、ほとんど中学生高校生から全く進歩していないってことじゃないかしら。

 

これがSPA!の編集長曰く「マッチングアプリ運営者の体感に基づくデータを実名でランキング」で、解説としてその人物の「あの大学のオンナと何度か飲んだことあるんですど、遊んでる感じなんすよ、たぶんキャンパスが渋谷にあるからじゃないっすかねー、服も男ウケめっちゃ意識してますし、横浜方面に住んでる人が多いから終電が早めなんで、それ逃せばホテルに連れ込むの簡単だと思いますよ」みたいなことが書いてあるのも、なんつうかほんと言葉を失います。

いやあのね、そもそも「体感に基づくデータ」って何ですかそれ。よく全く内容のないカスッカスな話を、難しい言葉とか固い言葉とか外来語とか駆使してさも説得力あることのように語ってケムに巻こうとする、偏差値は高いけどカスッカスな人っているけど、その手の戦法でしょうか。1億歩譲って「マッチングアプリ運営者100人の体感に基づくデータ」だったら(まあそれでもアホかと思うが)まだ「データ」って言葉を使うくらいは許してやってもいい、1億歩譲って。でもこれ、海外で恥さらしなニュースにまでなったこの事件を「炎上商法大成功!」とばかりにRTしている、そうとうアレな「マッチングアプリ運営者」たったひとりの、得意気な“くだらない居酒屋語り”みたいにしか思えないんですが。

Amazonでは「この本は現在お取り扱いできません。」となっている。


今年も形だけの謝罪しかしない人たち

と、ひと怒りしたところで。明けましておめでとうございます。この年始は、著名な写真家・広河隆一の強制わいせつ事件とか、ハリウッド俳優ケビン・スペイシーの性的暴行裁判とか、“渥美マター”なトピックが山盛り。ああどれにしようかしらと記事をあさっている時にひっかかったのは、やらかした皆さんの「謝罪」が、本質的には全然謝っていないことです。「あなたが不快に思ったならすみませんでした(意訳・こっちはそんなつもりはなかったんだし許されるよね)」とか「向き合い方が不実で傷つけてしまった(意訳・優しくしなかったからスネてるんだね)」とか、ハリウッドから抹殺された大物セクシャルプレデター、ハーヴィー・ワインスタインが「やってない」と言い張ってダメだったという事実から学んだのか、一見誠実そうに聞こえる責任逃れの言い訳三昧。とりあえず謝っとけ、悪いと思ってないけども、が見え見えです。

でもってSPA!の編集部は、今度の事態にどんな風に謝っているかというと
●「より親密になれる」「親密になりやすい」と表記すべき点を、読者に訴求したいがために扇情的な表現を行ってしまったこと
●運営者の体感に基づくデータを実名でランキング化したこと
●結果、読者の皆様の気分を害する可能性のある特集になってしまったこと
そのへんも勿論どうなんだというところですが、やっぱり論点はちょっとズレています。一番の不愉快は女性を「性的なモノ」扱いしているところなんだけど、とはいえそこはおそらくこの雑誌の通常運転なんで謝罪できないのでしょう。だってバックナンバーを見ると何号かに1回は表紙に「ヤレる」という言葉が躍る雑誌なのだもの(ちなみに「狙うべきは自己肯定感が低くてそれでも認めてほしい女たち」なんていう見出しが躍る「出会える/ヤレる男を作る超最新理論」という別冊も作っています)。

仕方ないなあじゃあ今回だけは勘弁してあげてもいいけど、今後誌面に踊る「ヤレる」はひとつ残らず、片っ端から「より親密になれる」に完全置き換えってことでよろしく。