“女性をはじめとする多様な人々が活躍する豊かな社会”を目指すイベント「MASHING UP」が、2018年11月29日、30日の2日間にわたり開催されました。Bravery(勇気)& Empathy(共感)をテーマに行われた多彩なセッションから厳選して、その内容をレポートします。

『職場の孤独マネジメント』のセッション後、石川善樹さんに“寂しさからの脱し方”についてうかがいました。家庭や職場、SNSとさまざまな人間関係にあるなかで、私たちがなおも寂しさを感じてしまうのはなぜなのでしょうか。

 

「“周りと仲良くすること”を幸せのゴールにしているからではないでしょうか。トラブルなく、みんなに合わせるために常に周りをうかがっているから、結局はやりたいことができずいつまでも満たされない。でも、そのゴールはあなたが決めたものです。解決のために必要なのは人間関係どうこうではなく、より自由に生きたいとあなた自身が“決める”ことだと思いますね」

知らず知らずのうちに自分の欲求を押さえ付けてしまい、そのためにいつまでも満たされないーー。これは、寂しさだけのことではないはず。

「一度きりの人生ですし、今日という日は今日しかないんですから、もっと自由に生きていいと思うんです。でも、例えば『これからの2時間で何がやりたいですか?』と問いかけて、すぐ答えられる人って意外と少ないんですよ。みなさんいつも、本当にやりたいことより“とりあえずやらなきゃいけないこと”で埋めてしまっているんですよね」


その常識は、本当に従うべきものなのか

 

さまざまなことに絶えず追われる日々の中では、「これって本当に今やらなければいけないことなのか?」と、時に立ち止まり、自分に問いかけてみることも必要なのかもしれません。ほかにも、人はあらゆる思い込みの中で生きていると、石川さんはいいます。

「例えば、『人生100年といわれるこれからの時代、人は何回恋をして、何回結婚するのか』と考えてみてください。暗黙の了解で何となく“結婚は1回(きりが望ましい)”となっているけど、そんなのはもっと寿命が短かった時代の発想だと思いませんか」

今まで考えたこともなかったけれど、言われてみればその通り……。とはいえ、当たり前のことに疑問の目を向けるのは、真似しようと思ってできるものではないのも事実。自らを縛りつけてしまう不要な思い込みに気付けるよう、訓練することは可能なのでしょうか。


凝り固まった思考を変えるには、まずはインプットから


「訓練は可能ですが、これは迂闊にしないほうがいいと思います。なぜなら、考える人生ってやっぱり大変だし苦しいですから。考えない人生が一番ラクです(笑)。考え方、つまりプロセスがなかなか変えられないのなら、いろんなものを見たり聞いたりして、インプットの方から変えていくといいのでは」

 

新たなインプットとしておすすめしてくれたのが、民俗学者・宮本常一の著書『忘れられた日本人』(宮本常一著、岩波文庫)。日本各地を歩きながら調査したおよそ100年前の庶民の暮らしが、詳細に描かれています。

「昔の人たちは男も女もみんな恋に奔放で、結婚してたって夜這いなんか当たり前。当時は結婚とセックスが完全に別のものだったんですよね。別に不倫を推奨したいわけじゃないですよ(笑)、自分の中の常識を疑ってほしい、ということです。これを読むと“結婚は一度だけ”“結婚したら恋はできない”といった昔からの常識みたいなことが、実はつい最近の感覚でしかないということがよく分かりますよ」

最後に、少し勇気づけられるデータを。年代別の“ウェルビーイング(幸福度)”を見ると女性は大きなU字カーブを描くそうで、一番低いのが40代、逆に50代からはどんどん上がっていくのだとか。


 

「80代なんてみんなめちゃくちゃ元気ですよ(笑)。歳をとるにつれいろんなことが気にならなくなるということでしょうか。時間が解決してくれる、ということも女性の場合はいえそうですね」と石川さん。周囲の目や評価を気にせず、自分の欲求により忠実になるために、まずはインプットについて考えてみてはいかがでしょうか。

写真/塩谷哲平
文/山崎恵
構成/柳田啓輔