“女性をはじめとする多様な人々が活躍する豊かな社会”を目指すイベント「MASHING UP」が、2018年11月29日、30日の2日間にわたり開催されました。Bravery(勇気)& Empathy(共感)をテーマに行われた多彩なセッションから厳選して、その内容をレポートします。
Slack Japanの生垣侑依さん、予防医学研究者の石川善樹さん、JINS MEMEの井上一鷹さん、BUSINESS INSIDER JAPANの滝川麻衣子さんによるセッションのテーマは『職場の孤独マネジメント』。職場で孤独を感じる原因は人間関係だけでなく、最近では働き方やコミュニケーションツールの変化なども挙げられます。それらとどう向き合うべきかを考えました。
さらに、セッション後の石川善樹さんにインタビュー。現代の煩雑な人間関係のなかでも孤独を恐れないために、すぐ実践できる方法とは?
コミュニケーションのデジタル化が孤独を助長する?
まずは、コミュニケーションのデジタル化による孤独について。とくに最近ではSlackが“LINEのビジネス版”として急速に浸透しつつありますが、実際に使ってみるとその便利さゆえの悩みもあるよう。
「私たちBUSINESS INSIDER JAPANでは、子育てや介護など、いろんな事情を抱えた社員も多いので、社内でのコミュニケーションはほとんどSlackに頼っています。ただ、いつでもどこでも仕事できる分、昼夜も曜日も関係なく“24時間オンライン状態”になってしまうことが。ウェルビーイングの観点からみても、これってどうなのかな……という気持ちはあるんですよね」(滝川さん)
「私自身も、つい寝る前に開いてしまったり、といったことは多いですね。Slackに入って感じたのは、“デジタルを活用して非デジタルの時間を作るスキル”の必要性。例えば1時間の会議でも、うち30分は情報の共有だったりしますよね。そこをデジタル化すれば会議は議論のための30分で済むし、余った30分は同僚と対面で話す機会や家族と過ごす時間に充てられる。デジタルでできることとそうでないことをきちんと分けることも重要ですね。実際、週1回のワン・オン・ワンで話す内容はプライベートの話が半分以上ですし、そこから生まれた信頼関係は仕事にも戻ってきていると感じます」(生垣さん)
Slackでは「カンパニー・シャットダウン」と称して、際限なく届くメッセージを一切見ずに済むよう、年末年始の2週間は会社ごと閉じる、といったことも実践しているのだとか。デジタルによってさまざまなことが効率化した分、組織の慣習やシステムにもそれに合わせた改変が必要とされているのかもしれません。
孤独は必ずしも悪いものじゃない
またコミュニケーションのデジタル化やリモートワークのような働き方が進むことで、社内で顔を合わせた時に輪に入れなかったり、疎外感を感じてしまうといった新たな悩みも。これについては、まずそれぞれの孤独の違いに目を向けるべき、との意見が。
「僕は普段、“集中”の観点からみた空間作りについて考えているので、それでいうと、個人的にはむしろ、孤独な時間はちゃんと作ったほうがいいなと思うんですよ。最近は、人とコミュニケーション取らなきゃいけない、という強迫観念をみんなが持っていると思うし、とくに日本人は、空気読め、って育てられますしね。ある学説によると、人は深い集中に入るまでに約23分かかるそうです。でも現実は、大体11分に1回くらいの頻度でSlackか『ちょっといいですか』が入ってくる(笑)。孤独というとすごく悪いことのように聞こえるけれど、人との時間でスケジュールがほぼ埋め尽くされている状態も、それはそれで恐ろしいというか」(井上さん)
「これってテクノロジーの話というよりは、人はいろんなタイプにわかれるってこと。井上さんのように孤独な時間が欲しい、なるべく放っといてほしいと思う人もいれば(笑)、その一方で、自由よりも承認やつながりを求める人もいる。ただ人はどうしても自分の経験からものを考えるので、孤独が欲しい、という感覚は多くの人には想像しにくいかもしれませんね」(石川さん)
大人になってからの“友達”の作り方
さらに、石川さんから問いかけが。それは“社会人になったら友達はどうやって作るのか”ということ。とくに終身雇用から転職が前提の時代になり、またプロジェクトごとにその都度チームを組むといったやり方が進んだ現在では、友達といった感覚を仕事仲間に持ちにくくなっている、とも。
「仕事仲間の中に友達と呼べる存在がいるかどうかは、組織内での健康度を測るうえでの最重要事項です。また今後、日本は平均年齢が50歳を超え、組織に属さない人の方が多くなっていきます。そんななかで何もせずにいたら、すぐに誰とも付き合いがなくなってしまう。大人がどうやって友達を作るか、これは職場での孤独に限らず、日本全体にとって重要なテーマとなる気がしますね」(石川さん)
文/山崎恵
構成/柳田啓輔
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