“お腹を凹ませる”“体幹の筋肉を鍛える”というと、一生懸命腹筋や背筋のトレーニングをしなくてはならないと思ってはいませんか? 実はもっと自然に、誰にも気づかれずに鍛える方法があるのです。それは、座り方を変えること! 座り方をほんの少し変えるだけで、体幹が鍛えられ、代謝もアップし、ポッコリお腹も解消できてしまうのです。
整形外科医の中村格子先生の新刊『医師が教えるゼロポジ座り』から、その理由についてご紹介します。


体にいい究極の座り方=ゼロポジ座り!


みなさん、よい座り姿勢というと股関節を90度にした直角座りを思い浮かべるかもしれませんが、実は違います。『医師が教えるゼロポジ座り』でおすすめしている座り方は、股関節が110度に開く座り方、通称“ゼロポジ座り”です。
骨格にゆがみのない状態のことを、医学的に「ゼロポジション」と呼んでいますが、股関節を110度に開くと脊柱がゆがまず負担がかからないため、“ゼロポジ座り”と名付けました。

(ゼロポジ座りの座り方は「整形外科が考案。腰が痛まない、疲れない座り方」をご覧ください)

 

このゼロポジ座りをすることによって、腰痛が解消したり、内臓の機能が整ったりとさまざまなメリットがあるのですが、ほかにも嬉しい効果が!
それは、座っているだけで体が引き締まり、太りにくくなるということです。

この座り方をすると、骨盤がまっすぐに立ち、脊椎も正しい状態になるので、脊柱起立筋や多裂筋などといった姿勢を支える筋肉が使われ続けるため、これらの筋肉が自然と鍛えられます。また、ゼロポジ座りをすると肺を肋骨などで囲んでいる「胸郭」部分がしっかりと立って動きやすくなることで呼吸が整い、このことからも体幹の筋肉が鍛えられます。 

私たちの体の胴体部分である「体幹」は、横隔膜で仕切られた胸腔と腹腔の2階建て構造になっています。そして真ん中の2階の床部分にあたるのが横隔膜です。
2階部分である胸腔は肋骨などからなる胸郭で囲まれ、その中には肺や心臓が、1階部分にあたる腹腔には腸などの消化器官が入っています。1階を支える床の部分にあたるのが骨盤底筋群です。

 

呼吸をしているとき、息を吸うと横隔膜が広がってやや下がり、吐くときは縮んでやや上がります。これに連動して協働筋であるお腹の腹横筋や骨盤底筋群も動きます。逆に言えば、横隔膜がきちんと動かないと腹横筋や骨盤底筋群はうまく力を発揮できません。
横隔膜がきちんと動く呼吸ができていると、無意識のうちに自然に体幹の筋肉が動いてくれて鍛えられるのです。
私たちは一日約2万回、1分間にすると12~20回ほど呼吸をしていますが、この呼吸の回数分、体幹の筋肉も動きます。つまり、正しく呼吸ができていれば1分間に12~20回ほど腹筋をしているのと同じ効果が得られるというわけです。

一方、いつも背中を丸めた悪い座り方をしていると、胸郭が下を向き肋骨が開きにくくなります。また、脊椎のうちの胸椎(首の頸椎と腰の腰椎の間にある骨)がガチガチに硬くなり上体が反らしにくくなっていきます。
すると胸郭を広げて空気を十分に入れられなくなるため、横隔膜の動きが悪くなっていきます。同時に協働筋である骨盤底筋群や腹横筋の動きも悪くなり使われなくなります。使われなくなるとこれらの筋肉が硬く衰えてしまい、お腹がぽっこりと出やすくなります。また、骨盤底筋群の衰えは、尿漏れも招くので要注意です。

でも、ゼロポジ座りをすれば骨盤の上に腰椎がのり、脊椎全体が正しい状態になるので横隔膜の動きもよくなり、呼吸のたびに体幹の筋肉が鍛えられます(一日2万回も!)。つまり、座っているだけで筋トレになるのです
わざわざジムに通う必要もなく、お金もかかりません。
筋肉は、人に見せるために鍛える人もいますが、本来の役割は、日常動作がスムーズにできるように機能させることです。そのための筋肉は正しく座っているだけでも十分に鍛えられます。
ゼロポジ座りをすると、体幹が鍛えられてお腹が引き締まるだけでなく、基礎代謝も上がるので太りにくくもなり、若々しい体型がキープできます。
がむしゃらに鍛えた筋肉に覆われた体よりも、機能的な体こそが、美しくてかっこいい体なのです。

『医師が教えるゼロポジ座り』では、ゼロポジ座り方のやり方について詳しくご紹介しています。「最近お腹が出てきた」「姿勢が悪いのがコンプレックス」など、体や姿勢にお悩みがある方は、ぜひチェックしてみてください。

中村 格子(ナカムラ カクコ)

整形外科医
医学博士・スポーツドクター Dr. KAKUKO スポーツクリニック院長
よこはま健康づくり広報大使
日本体操協会専任メディカルスタッフ(新体操)
横浜市立大学医学部卒業。「健康であることは美しい」をモットーに整形外科医・スポーツドクターとして各種競技の日本代表選手をはじめとしたトップアスリートを支える傍ら、スポーツと医療の架け橋としてより多くの人の健康で美しい人生をサポートすべく自身のクリニックのほか、テレビ・雑誌などのメディアでも多数活動。現役臨床整形外科医として25年以上のキャリアとトップアスリートのコンディショニングの経験から独自のエクササイズを提案。特別な道具やテクニックは一切必要なく、体力に自信がない方や痛みのある方、運動が苦手な方でも安心して取り組んでいただけるエクササイズが特長。また著書『大人のラジオ体操』はシリーズ累計82万部を超えるベスト&ロングセラーとなっている。
•『DVD付き 実はスゴイ!大人のラジオ体操』(講談社)
•『DVD付き もっとスゴイ!大人のラジオ体操』(講談社)
•『DVD付き いきいきシニアの大人のラジオ体操』(講談社)

 

『医師が教えるゼロポジ座り 疲れない、太らない、老けない』
中村 格子 著 1200円(税別) 講談社


体に負担をかけない新しい座り方=“ゼロポジ座り”
“よい座り方”というと、股関節と膝を90度に曲げ、背筋を伸ばした座り方、いわゆる“直角座り”をイメージすると思いますが、実はこの座り方、体幹の筋肉が相当鍛えられていないと、「すぐに疲れる」「続けられない」ものなのです。
整形外科の中村格子先生がおすすめする疲れない座り方は、股関節をやや広い110度程度に開くもの。この角度だと、関節や筋肉に負担がかからない、医学的な“ゼロポジション”となります。
この座り方の新常識、“セロポジ座り”のコツを、本書で詳しくご紹介します。

【ゼロポジ座りをすると】
・腰痛や肩こりが改善
・疲れない体になる
・運動しなくても体が引き締まり、太りにくくなる
・内臓の機能が整う
・心肺機能が高くなる
・集中力がアップする
・自律神経が整い、イライラがなくなる

『医師が教えるゼロポジ座り』のほか、料理、美容・健康、ファッション情報など講談社くらしの本からの記事はこちらからも読むことができます。
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構成/生活文化編集チーム
イラスト/須藤裕子

出典元:https://kurashinohon.jp/952.html

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