出た出た出た、またしても「誤解を与えたなら撤回する」謝罪by麻生太郎。悪いと思ってないのは見え見えですが、この人ちょっとアレなのかなあ。あまりにお坊ちゃんだから好き勝手言ってもオールOK、生まれてこの方謝ったことないから「相手に響く謝罪」なんて犬の餌と同じくらい知らないのかもしれませんが、それ以上にライターの私が気になるのはこの人の言葉の足らなさ、使い方の雑さです。

写真:AFLO

「高齢者が悪いというイメージを作っている人はいっぱいいるけれども、子供を産まなかったほうが責任がある」って言って、ははーんなるほど「高齢化より少子化のほうが問題」って意味ね……って思うかーい! あれかしら、お坊ちゃまのことだけを朝から晩まで考えている霊能者みたいな“じいや・ばあや”に囲まれながら生きてきたとかかしら? 「あのな、今日のめ……」って言っただけで「えええっ!今日の朝食の目玉焼き、黄身が固すぎましたか!」と分かってもらえる的な環境だったとか。あいにくこちらは霊能者でも“じいや・ばあや”でもないし、むしろあなたが政治家=パブリック・サーバントなんだから、言葉はもう少し丁寧に使っていただきたいものです。ご本人は「言葉尻で絡まれた、またかよ!」と被害者かのように思っているかもしれませんが、それこっちのセリフです。麻生さん、またかよ。


さてこのニュースを聞き改めて思いました。日本社会はまだまだ日本人女性の「選択」に対して眉をひそめるんだなあと。「産まなかったほうが悪い」って無邪気に言っていますが、その言葉の主語は明らかに「女性」で、さらにこの人の性格からして「ウケ狙い」なわけですから、この世代の人、この人の周辺や支持基盤は意識無意識に「産まなかった女が悪い」と思っているってことでしょう。

でもね。子供を産んでない私が一億歩譲ってそのそしりを受け入れたとして、何か変わるんでしょうか。いやあのつまり、「お前が悪い!お前らが悪い!」と責め続けて、「おっしゃるとおり!申し訳ないから産みます!」となるとでも? 政治家のみんなは、イソップ童話の「北風と太陽」って読んだことないのかな~?


まあそれでも、例えば、産むとしましょうか。でも配偶者いないんですが、それでも大丈夫?え? 両親家庭と同じだけの扶助は受けられない? ま、まあ、仕方ないか。そうしたらとりあえずは精子バンクで! あ、でも妊娠中に仕事できないと、特にフリーランスなんでちょっと厳しいんですが、その間の補助とかは……ない。ですよね、そりゃそうですよね。ま、まあたぶん親が、年老いた親が助けてくれるでしょう。でも子供産んだ後も仕事できないとなると……親? でも彼ら、本人たちが介護必要な歳なんで、預けるというのも……っていうか、介護と子育てダブルで来ちゃった場合は……っていうか子供って一瞬で育つもんじゃないし、収入は大丈夫なの、私。「産め」って言ったくせに政治はなんも助けてくれないのーっ!と、こんな状況でいっぱいいっぱい、とっちらかった私を、世の中は「無職のくせに無計画に子供を作った無責任女!」と罵るんじゃないだろうか――。


とか考えたら「申し訳ないけど子供産みません!」ってなる人が増えるのもうなずけます。にもかかわらず女性のそうした選択を、麻生さんよろしく責める人は、いまも少なくありません。結婚しないの? 子供産まないの? 結婚してないのに子供産むの? 結婚したのに子供産まないの? 母親なのに仕事続けるの? 夫に育休とらせるの? 女なのにそうまでして仕事したいの? 出世したいの? 出産に限らず、女性の自由な選択には恐ろしいほど勇気がいります。

でもなにかしら誰かに自分の選択をゆだねることは、自分を「支配」させることなんじゃないか。そしてそれを続ければ、人はやがて「支配されること」になれきってしまいます。自分の気持ちと向き合わず、自分がどうしたいのか分からず、誰かが決めてくれる安穏の中で「支配されていること」を意識すらしなくなり、果ては自分にとって何が一番大事なのかもさっぱりわからなくなり……その末に起きたのであろう野田市の小学生虐待死事件の報道に、私が改めて思うこと。世の中にあふれる人を支配しようとするものが、私は憎い。どうか支配されないで。