今、韓国映画を動かす人物
韓国で評価される映画人は、大衆に受け入れられ、商業的に成功を収める人でもある。そんな韓国映画界を支えるキーパーソンたちを紹介する。
【1】チャン・フン 監督
キム・ギドク監督に師事し、ギドクが原案・製作した『映画は映画だ』(08)でデビュー。南北それぞれの国家に翻弄された二人の男の友情ドラマ『義兄弟 SECRET REUNION』(10)、朝鮮戦争の高地戦を描く『高地戦』(11)、『タクシー運転手 約束は海を越えて』(17)を手がける。1975年生まれのチャン監督、光州事件の頃は、まだ5歳。民主化運動との心理的距離感があったからこそ、歴史的な事件を目撃した一国民の心の変化をリアリティをもって映し出せたのだろう。重々しい社会派ドラマを、一流のエンタメに仕上げる今後も期待の監督。
【2】コン・ユ 俳優
人気ドラマ『コーヒープリンス1号店』(07)での大ブレイク以降、映画とドラマで大活躍。みんな大好き、コン・ユ。光州のろうあ者福祉施設が隠蔽していた児童に対する性的虐待事件を告発した小説『トガニ 幼き瞳の告発』。兵役中に本書を読んだ彼が映画化を働きかけ、自らの主演で実現。映画は460万人以上を動員し、世論が動き、13歳未満の児童への性暴力犯罪の処罰に関する改正案、通称「トガニ法」が成立する。映画を契機に、モデルとなった加害者に懲役12年の判決が下った。コン・ユがいなければ、トガニ法は生まれなかったのである。
【3】ヨン・サンホ 監督
韓国の長編アニメとして初めてカンヌ国際映画祭(監督週間部門)に出品された『豚の王』(11)、『我は神なり』(13)などを手がける、社会派アニメーション作家ヨン・サンホ。ゾンビ感染パニックアニメ『ソウル・ステーション パンデミック』(16)製作時に実写映画のオファーがあったことをきっかけに、コン・ユ主演『新感染 ファイナル・エクスプレス』(16)で実写映画デビュー。ハリウッドリメイク版も決定し、気になる続編の撮影は2019年に開始。Netflix映画『サイコキネシス-念力-』(18)も愉快。今もっとも注目すべき監督の一人。
【4】イ・ドンハ プロデューサー
19歳で『パリ、テキサス』(84)を観て、映画の世界に入ることを決意。ウニー・ルコント監督『冬の小鳥』(09)、イ・チャンドン監督が第63回カンヌ国際映画祭の脚本賞を受賞した『ポエトリー アグネスの詩』(10)、イ・ユンギ監督『男と女』(16)などを手掛ける。2014年に制作会社RED PETER FILMSを設立。ヨン・サンホのスタジオ Dadashowと共に『ソウル・ステーション パンデミック』(16)を製作。『新感染 ファイナル・エクスプレス』(16)の大ヒットにより、米Variety 誌の「2017年に注目すべきプロデューサー10人」に選ばれている。
【5】イム・スルレ 監督
韓国映画界を代表するベテラン女性監督。韓国映画産業における女性の役割を検証したドキュメンタリー『美しき生存 女性映画人が語る映画』(01)や、現代韓国の家庭事情を浮き彫りにする『飛べ、ペンギン』(09)、実録サスペンス『提報者 ES細胞捏造事件』(14)まで幅広いジャンルを手掛ける。2019年初夏に日本公開となる、キム・テリ主演で五十嵐大介原作漫画の映画化『リトル・フォレスト 春夏秋冬』を監督。田舎の四季のみずみずしい生活が美しい映像で綴られる。ジェンダーレスで世界を受け入れるような温かい目線が特徴の監督。
【6】キム・テリ 女優
現在、韓国女優のなかでも圧倒的人気と実力を誇る、28歳のキム・テリ。1500分の1のオーディションを勝ち抜き、パク・チャヌク監督作『お嬢さん』(16)で長編映画デビュー。『1987、ある闘いの真実』(17)では、主人公の女子大生ヨニ役をキュート且つユーモラスに好演。『太陽の末裔』『トッケビ』の脚本家キム・ウンスクと演出家イ・ウンボクのタッグが手がけたNetflixオリジナルドラマ『ミスター・サンシャイン』(18)でもヒロイン、エシンといい、『リトル・フォレスト 春夏秋冬』の主人公へウォンといい、ホントいい役ばかり!
<書籍紹介>
『TRANSIT(トランジット)42号 韓国・北朝鮮 近くて遠い国へ』
発行 euphoria factory / 発売 講談社 ¥1800(税別)
12月14日(金)発売 電子版も発売中!
TRANSIT42号では、地理的にも精神的にも日本と近く、ときに強く惹かれ合い、反発し合ってきたお隣の国、韓国・北朝鮮を特集しました。特集:コリアンフードの処方箋、現代韓国を知る手帖、韓国カルチャーの来た道(K-POP/ドラマ/映画/文学/ファッション etc)、ベールの中の北朝鮮(金一族/平壌の暮らし/外交/国の行方 etc)。小冊子:「OhBoy!特別編集ソウルガイド」「もし北朝鮮を旅するなら」など。
※『TRANSIT42 韓国・北朝鮮 近くて遠い国へ』より抜粋
(文/小川知子、イラスト/東海林巨樹、取材協力/イ・ヒャンジン)
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