いつからだろう、韓流ファンの枠を超えて、音楽、映画、文学好きが「Kカルチャー」の世界を語るようになったのは。各領域で質の高い作品を量産し、彼らは世界に語りはじめた。自分たちのこと、韓国社会のことを。
世界のライフスタイルを“旅”のフィルターで読み解くトラベルカルチャーマガジン『TRANSIT42 韓国・北朝鮮 近くて遠い国へ』では、そんなKカルチャーを取り上げました。その誌面の一部をここではご紹介。第三弾は進化を続ける「コリアンモード」に焦点を当てる。
進化する“コピー”の新概念
多くの問屋が集まり、一般客もショッピングできるビルが立ち並ぶ、東大門(トンデムン)。そこでは、スターがパパラッチされれば、その着用したドレスとそっくりなものがすぐ手にはいる─。そんなコピー合戦が韓国ファッションのイメージかもしれない。しかし、それは10年以上も前の話だ。
1990年代のスポーティ感や違和感あるサイジング、コンテンポラリーな解釈のアメリカンテイストなど、その絶妙なつなぎ合わせでモード界に新風を吹き込んだヴェトモン。そのデザイナー、デムナ・ヴァザリアが手がけたことで、高額ながらも多くのヒット商品を生む仏メゾン、バレンシアガ。今ソウルは、このバレンシアガとヴェトモンに激しく刺激を受けている。
ADERerror(アーダーエラー)コラージュ感やUSBを差し込むデザインがレトロフューチャーなムード。2018年秋冬、プーマとのコラボライン。
たとえば、シンプルなタイポグラフィが刻印されたアイテムが人気の〈ADERerror〉。ハリのある素材、ゆったりしたサイジングなど含め、バレンシアガとヴェトモンを想起させないといったら噓になるが、メリハリある韓国らしいポップなアレンジや、メゾンキツネ、プーマといったビッグネームとのコラボレーションで独自のスタイルを確立している。
同様に、ソウルファッションウィークに参加する〈CHARM’S〉も、違和感あるレイヤードやストリートを意識したスポーティなテイストミックスが特徴。スポーツブランド、カッパとのコラボレーションがランウェイを飾り、目新しい90年代フレーバーを漂わせている。
さらに、フィービー・ファイロによるセリーヌ(2018年春夏まで)が牽引してきた、着やすくモダンなシンプルスタイルを継承する〈LOW CLASSIC〉といったブランドがいくつかある。〈pushBUTTON〉は、バレンシアガのお家芸、構築的なシルエットやテイストミックスを織り交ぜ、2018年は新たなスタイルを切り開いた。とにかく、消費者も含め業界全体として、モダンでシンプルなものへのニーズが高いのが特徴だ。
pushBUTTON(プッシュボタン)(写真左)80 s的パワーショルダーにレトロなエッセンスを追加した2018年秋冬コレクション。(右)ベーシックアイテムを新感覚のルーズシルエットで表現した2019年春夏コレクション。
活躍する多くのブランドは、その販売方法がユーモラスであることも忘れてはならない。〈Andersson Bell〉は海外からアーティストを招き、店の一角でインスタレーションを行なっていたり、〈GENTLE MONSTER〉は、店そのものをギャラリーに見立て、数カ月ごとにコンセプトすら変えている。訪れた客はスマートフォンで写真を撮り、ブランドのハッシュタグをつけSNSにアップ。瞬く間に世界中に拡散されていく。
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