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【雪模様】京都のおうどん

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「雨が降ったら100年、雪が降ったら1000年」という言葉があります。
これは「京都では雨が降ったら100年前の、雪が降ったら1000年前の景色がよみがえる」という意味で、主人の祖父がよく言っていたそうです。たしかに雨や雪は余計な色彩をかき消してくれますね。京都市内は雪が多くないので、少しまとまって降ると人も車も一気に消えて、お店も閉まって、雑音も消えて、路面の標識も消えて……確かに少しタイムスリップ感を味わえるかも!

今回は京繡の家にある「雪」の作品をご紹介します。

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枝が垂れるほど重たく、ドサっといまにもこぼれそうな雪の情景。質感を表現するため雪の部分だけ太さの違う糸を縒り合わせてわざと表面をざらつかせています。

実は雪も吉祥文様。豊年の兆しとして好まれてきました。草木に雪が降り積もった雪持文、ボタ雪のような雪輪文に加え、江戸時代後期には結晶の文様も流行しました。

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降り積もる雪を白糸と銀糸で表現。少し鈍い銀色を使うことでずっしり水分を含んだ雪の重たさが伝わってきます。

 

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こちらは雪持ち芭蕉の能衣装。ん、なんだか違和感が…芭蕉は南国の植物なのにどっさり雪が積もっています。夏のモチーフに雪が積もるこの図案は涼を感じる意匠として古くからあるものですが、この作品では「あり得ない情景」「この世では無い世界」の表現として描かれています。お能の幽玄の世界観と雪をマッチングさせるとこうなるんですね……。


雪が降るほど寒い日に食べたくなるのは熱々のおうどん。京都にも地元民に愛されるローカルうどんがあるのをご存知でしょうか?
おそらく一番有名なのは「たぬきうどん」。京都では刻んだお揚げと九条ネギの「あんかけ」なんです。揚げ玉の入った関東の「たぬき」はこちらでは「ハイカラ」と呼びます。
「しっぽく」も京都の定番。かまぼこ、しいたけ、湯葉、ほうれん草など具材が賑やかなうどんです(長崎県のしっぽく料理がルーツという説も)。この「しっぽく」をあんかけにしたものを「のっぺい」と呼びます。お気づきでしょうか……たぬきにのっぺい、あんかけのバリエーションが豊富なんです。京都の冬は寒いので熱々のあんかけが好まれるようです。(ちなみに夏は夏で「冷やしあんかけ」で涼をとります。笑)

あんかけの中でも私が一番好きなのが「けいらん」。

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あんかけのお出汁にふんわり卵がとじてあり、真ん中にちょんと生姜が添えてあります。口当たりはこの上なく優しく、あんかけ&生姜効果で食べ終わる頃には発汗するほど温まります。

もしも冬の京都で雪に見舞われて「全然バスが来ない!タクシーも走ってない!もう寒くて歩けない…!」という時は、近場のおうどん屋さんに駆け込んで「けいらんうどん」を注文してみてください。心と体を温かくレスキューしてくれるはずです。

権太呂 金閣寺店
〒603-8365
京都府京都市北区平野宮敷町26
075-463-1039
11:00~21:30(L.O.21:00) 水曜日定休

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PROFILE 長艸 歩(ながくさ あゆむ)

1987年京都市生まれ。芸術大学にて絵画を学び、卒業後は京都の老舗日本茶メーカーで販売や広報として勤務。結婚、出産を機に夫の家業である「長艸繡巧房」にて伝統的な京都の刺繡「京繡(きょうぬい)」を学びはじめる。 現在は3歳と1歳の女の子を育てながら刺繡の技術の習得と、いままで触れる機会のなかったディープな京都文化の吸収に励んでいます。 Instagram(@sica.seka)でも刺繡や文様のことを発信しています。

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<5月9日 刊行予定!>
『繡えども繡えども』
(仮)

著者 長艸敏明
A24判 192ページ/ 講談社

長艸敏明氏は歩さんの義父。刺繡作家、京繡伝統工芸士である氏の作品集が出版されます。着物や帯のほか、季節ごとのしつらえや婚礼衣装などの祝い着、祭事の修復や復元まで京繡の第一人者である著者の“刺繡の力”を堪能できる100点を掲載。

構成/山本忍(講談社)