小栗旬という世代のリーダーが見せた舞台俳優としての生き様

エンタメ界の地殻変動⁈ 若手俳優の仕事選びに変化あり_img0
小栗旬出演の舞台『カリギュラ』(07年)。


そして、もうひとつ見逃せないのが、俳優・小栗旬の存在です。同世代のフロントランナーとして走り続けてきた小栗は交友関係が非常に幅広く、仲の良い俳優同士でよく酒を飲み明かしているのはバラエティでもおなじみの話。同世代あるいはその下の世代に対して与える影響力は強く、尊敬する俳優に彼の名前を挙げる後輩も多数。

そんな小栗は「欲を言えば、舞台だけやっていきたい」と公言するほど舞台愛の強い俳優でもあります。巨匠・蜷川幸雄の薫陶を受け、数々の舞台に出演。一般的に小栗がブレイクしたと言われるのは05年の『花より男子』からですが、以降もドラマや映画など大作のオファーがひっきりなしに舞い込む中、『カリギュラ』(07年)、『ムサシ』(09年)、『髑髏城の七人』(11年・17年)など、どんなに間が空いても2年に1本のペースで舞台出演を続けてきました。

小栗旬や、同世代の藤原竜也のように、映画やドラマでも堂々と主演を務める人気俳優が、演劇に活動の重きを置き、「舞台が好き」と発信する姿は少なからず同世代や後輩に影響を与えたように思います。

実際、初舞台の『皆既食 -Total Eclipse-』(14年)以来、ほぼ1年に1本のペースで舞台出演を重ねている岡田将生も、自分が観た中で最も影響を受けた舞台に『カリギュラ』を挙げ、「あんなに格好いい小栗旬さんを見れて、ものすごく刺激をもらいました」と明かしていました。映画『ゴジラVSコング(仮)』でハリウッド進出を果たすなど、小栗旬のキャリアは若手俳優たちにとってひとつのロールモデルになっているのかもしれません。


もちろん多くの人が楽しめる連ドラはこれからもたくさんのスターを生むことでしょう。ただ一方で、視聴率低下に歯止めがかからない現状を考えると、今後も連ドラとはつかず離れずの距離を保ちつつ、映画や舞台で意欲的な役に挑む若手俳優が増加しそうな予感。観たい俳優は、モニター越しではなく、劇場で。そんなライブエンタメ黄金期がこれからやってくるのかもしれません。

 

ライター 横川 良明
1983年生まれ。大阪府出身。テレビドラマから映画、演劇までエンタメに関するインタビュー、コラムを幅広く手がける。男性俳優インタビュー集『役者たちの現在地』が発売中。twitter:@fudge_2002

構成/榎本明日香、片岡千晶(編集部)

 

著者一覧
 
アイコン画像

映画ライター 細谷 美香
1972年生まれ。情報誌の編集者を経て、フリーライターに。『Marisol』(集英社)『大人のおしゃれ手帖』(宝島社)をはじめとする女性誌や毎日新聞などを中心に、映画紹介やインタビューを担当しています。

アイコン画像

文筆家 長谷川 町蔵
1968年生まれ。東京都町田市出身。アメリカの映画や音楽の紹介、小説執筆まで色々やっているライター。著書に『サ・ン・ト・ランド サウンドトラックで観る映画』(洋泉社)、『聴くシネマ×観るロック』(シンコーミュージック・エンタテイメント)、共著に『ヤング・アダルトU.S.A.』(DU BOOKS)、『文化系のためのヒップホップ入門12』(アルテスパブリッシング)など。

アイコン画像

ライター 横川 良明
1983年生まれ。大阪府出身。テレビドラマから映画、演劇までエンタメに関するインタビュー、コラムを幅広く手がける。男性俳優インタビュー集『役者たちの現在地』が発売中。twitter:@fudge_2002

アイコン画像

メディアジャーナリスト 長谷川 朋子
1975年生まれ。国内外のドラマ、バラエティー、ドキュメンタリー番組制作事情を解説する記事多数執筆。カンヌのテレビ見本市に年2回10年ほど足しげく通いつつ、ふだんは猫と娘とひっそり暮らしてます。

アイコン画像

ライター 須永 貴子
2019年の年女。群馬で生まれ育ち、大学進学を機に上京。いくつかの職を転々とした後にライターとなり、俳優、アイドル、芸人、スタッフなどへのインタビューや作品レビューなどを執筆して早20年。近年はホラーやミステリー、サスペンスを偏愛する傾向にあり。

アイコン画像

ライター 西澤 千央
1976年生まれ。文春オンライン、Quick Japan、日刊サイゾーなどで執筆。ベイスターズとビールとねこがすき。

アイコン画像

ライター・編集者 小泉なつみ
1983年生まれ、東京都出身。TV番組制作会社、映画系出版社を経てフリーランス。好きな言葉は「タイムセール」「生(ビール)」。18年に大腸がん発見&共存中。

アイコン画像

ライター 木俣 冬
テレビドラマ、映画、演劇などエンタメを中心に取材、執筆。著書に、講談社現代新書『みんなの朝ドラ』をはじめ、『挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ』ほか。企画、構成した本に、蜷川幸雄『身体的物語論』など。『隣の家族は青く見える』『コンフィデンスマンJP』『僕らは奇跡でできている』などドラマや映画のノベライズも多数手がける。エキレビ!で毎日朝ドラレビューを休まず連載中。