春が近づいてきたと感じると、ワクワクする。
なんだろう、夏のたくさん楽しいことがある!とはしゃぐワクワクとも違う、女性としての楽しみがフツフツと湧いてくるような。
毎年花粉症で酷く悩まされているはずなのに、それでも春が嬉しい。
特に今年は、ミントやライトブルーが注目色でピンクという言葉が溢れすぎてないせいか、この仕事をしていても耳にも目にもまだまだ新鮮ということもあり、ピンク欲が持続している。

ピンクといっても強いピンクでもくすみピンクでもなく、この時期に欲しいのは桜色。
可愛い服、甘い服が特に好きというわけではないのにここ数年急に、あのピュアな桜色が気になるようになった。

私が毎春纏うアイテム(気づけばこの連載のトップ写真でも着てました!)と、新入りのニット。桜色は、赤よりも優しく柔らかな分、大人になればなるほど勇気が必要な色。でも、合わせの服もメークも安心感を優先してダークな色を選ぶより、思い切って全身明るめの色でまとめてしまった方が、表情も明るくイキイキとして見えます。

年齢と経験を重ねるごとに、心も見た目も自然と強さが増し、ピュアさの不足を感じてしまった脳が、女性としての危機を感じて無意識に補おうとしているのかもしれない。

そんな先日、ピンクのニットとかあったかしら?なんて、クローゼットを探ってみたら…あれ?桜色トップスなんて全然ない。

私のクローゼットは普通よりずいぶんとカラフルだと自負しているけれど、まさか全くないとは…。
いつもならまだ寒い時期に一瞬だけやって来てすぐに去ってしまうピンク欲なものだから、暖かい冬用ニットにボトムだけ春を投入、なんていうことが多く、トップスなんて持っていなかったのだ。

どうしても桜色欲が収まらず、打ち合わせ合間にいそいそとお店に桜色を探しに行く。

すると、仕事仲間がなぜか恨み節で横からこういう。

「いいよね、痩せてると薄いピンクも似合うから」

ふくよかな身体だと桜色はもとより、淡い色全体が似合わないのだという。

確かに考えてみれば、桜色というのは十分すぎるくらいガーリーな色だから、曲線的なシルエットや甘いデザインとかけ合わせると過剰になる。

痩せているとは言われたけれど、20代の頃のように直線的なボディラインでいることはどんな人にもあり得ず、私だって身体の色々な部分が丸い。

実際、気分は桜満開なままなのに、お店の鏡で合わせてみるとどうもしっくりこないし、なんだか気恥ずかしいものばかりだ。

じゃあ諦める?

いや、クラス替えがあるわけでもない、新しい出会いもそうそうない、新たに始めたいことも星の数ほどというわけではなくなり、恋愛だって…なんて考えると、春のワクワクはだいぶ縮小気味に違いない今。

少女のような、ピュアな気分になれる、ちょっと淡くて気恥ずかしい気持ちになれるって大人になればなるほど貴重な機会だ。

それに、桜色を着た時のあの気恥ずかしさが、フェミニンな自分を新たに引き出してくれる気がする。

リッチな素材で、デザインはごくシンプルに徹し、直線的なシルエットの服でコントロールすれば、桜色の甘さが若作りに見えることもない。
初春限定のこの気分。淡い色が難しいという大人の女性も多いけれど、せっかくの時期なのだから、人の目なんて気にしすぎず、楽しんでみるのも手だと思う。
ただしガーリーな気分は心の中だけに密かに留めて。

選択が難しければハンサムなアイテムを。
例えばパンツで。例えばジャケットやシャツで。

桜色じゃなくとも、その純粋に透き通った色を潔く。
味方につけられる大人の女性はきっと素敵だ。

さあ、誰もが桜色に目を奪われるこの季節、貴女はどんな風にそれを纏いますか?最近ピュアな気分になった瞬間はありますか?

最近、お仕事で出会う素敵だな、と感じる年上の大人の女性たちは総じて、ピュアなチャーミングさを持っている気がします。色々なことに達観していて何事も冷静に見えるのに、何かの話題になると急にとても熱く語り出したり、ちょっとした一言にポッと頬を染めたり…。年下の私が言っては失礼かもしれないけれど、その姿はなんとも可愛く少女のよう。私もこんな部分を持つ女性でありたいな、なんて。密かな目標です。