「だって必要な荷物がいっぱいあるんだもーん」
そんな風に笑いながら、会社のデスクに積む書類を全て持ち歩いているんじゃないかというほど大荷物でいつも移動していた編集者の彼女が、首ヘルニアと診断されたことをきっかけに、ある日小荷物化革命を起こした。
選ぶ服が変わったわけではないのに、コーディネートの雰囲気が、さらには顔つきまでが一気に軽やかになったあの変貌ぶりは、あれからもうかなり月日が経っているのに鮮明に脳裏に焼きついている。
こんなことを急に思い出したのは、1日で何件もバッグブランドのプレスルームにお邪魔する機会があったある日のこと。
たくさんの新作バッグを手にしているうち、どんどんと気分が上がっていく自分に気づき、女性特有の高揚感を引き出す力をバッグに改めて感じた。
ただ、同じ高揚感といってもジュエリーと違うのは、ただの装飾品ではないということ。「荷物を持ち運ぶ」という目的も無視はできない。
たくさんの荷物を運ばなければいけない日は誰にでもあるから、なんでも入って便利な大きなバッグにもなりがち。
でも、なんでも入る、ということは「無駄なものが入っていても気にならない」ということも忘れちゃいけない。
忙しいを理由に中身を出して確認することもなく、ついつい毎日同じバッグで、気付けば今日使わないものを意味なく大量に持ち運んでいたという経験はきっと誰にでもある。
実際、先ほどの彼女曰く、以前はいつでもどこでも仕事に対応したい一心で何もかも大きなバッグに入れて持ち歩いていたけれど、結局使うのは3割。
小荷物化してみたら仕事効率はむしろ上がり、心も軽やかになったという。
そう、バッグの小型化は女性としての気分が上がり、心や時間の整理もできて嬉しいことばかり。
さらに言えば、大きくて重い荷物を持ち歩くより、歩き姿や立ち姿はもちろん、カフェで座席に着くまでの所作だって軽やかになれて美しい。
きっとジムや整体の先生だって、身体のバランスを保つためには荷物は小さくて軽い方がいいと思っているに違いない。
なんて、ここまで書いているとただただ小さなバッグを推しているようだけれど、実はそうシンプルにも言い切れないのがもどかしい。
パンパンに荷物を詰めてバッグが変形したり、口が閉まらなかったりするようでは本末転倒。
そして、ディナーや特別な集まりなどでない限り、日常のバッグが極端に小さすぎることは品を欠いて見えることや、身体が不必要に大きく見えてしまうことだってある。
大きすぎず、でも小さすぎもせず。
理想はその日の自分に必要な荷物だけをミニマムにまとめ、それが少しの余裕をもって入れられる程よい大きさと、その時の装いや気分に似合うデザインを兼ね備えたバッグを選べること。つまり、手持ちのバッグのラインナップがそれに沿うものでもあること。
そう、全ては用と美のバランス。
それを叶えられている女性から感じる知性はとても魅力的だ。
私もできていないから自戒の意をこめて。
なかなか難しいからこそ、まずは週末のちょっとしたお出かけから始めてみよう。
さて、貴女のバッグの中身はいつもどんなものが入っていますか?サイズにも気分にもちょうど良い、を選べていますか?
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