米倉涼子さんが、過去に観た映画を紹介するアーカイブ コレクション。
そのときに観た映画から、米倉さんの生き方、価値観が垣間見えます。
私の心にド直球で響いた、去年観た映画のなかのNo.1 ! 大好きすぎて周りのみんなにおすすめしまくった『恋するリベラーチェ』のDVDが、ついにリリースされました。
リベラーチェとは、天才的なピアノのテクニ ックとド派手なステージで’70年代を中心に人気を呼んだエンターテイナーの名前。同性愛者の彼は息子ほど年の離れた犬の訓練士の青年スコットを見初めて、そばに置くようになります。犬の目薬を口実にして安心感を持たせる誘い方も上手だし、華やかな生活でスコットを引きつけるやり方もすごく巧み。ファッションやジュエリ ー、インテリアから食べ物まですべてがギラギラしていて、わかりやすいお金持ちの生活が描かれているのも楽しいところです。
でも時間が経つにつれて、リベラーチェにとってスコットは“one of them”であることが伝わってきて、切ない展開になっていきます。リベラーチェに言われるまま、彼の顔に似せて整形までしたスコットなのに……。でも最期に会うのはスコットなのだから、やっぱりふたりの間には本物の愛があったということなんでしょうね。ゲイが主人公ですが、この映画には恋心や嫉妬、野心など普遍的な感情が描かれています。
すべての感情に説得力があるのは、リベラーチェを演じたマイケル・ダグラスの演技が突き抜けているから! ジャクジーの場面ではハゲ丸出しで、ここまでやってくれるんだ、と感動すら覚えてしまいました(笑)。
マット・デイモンも頑張っていたけれど、彼にくらべるとまだまだ⁉ 年をとってからこんなにエネルギッシュな姿を見せてくれるマイケルには、本当に脱帽しました。今まで、キャサリン・ゼタ・ジョーンズのダンナさんとしか思ってなくてごめんね、と謝りたい気分です。
笑えて切なくて“ゲイあるある”も知ることができる、女の人たちにもぜひ観てほしい一本。レディー・ガガの世界観が好きな人も、ハマってしまうと思いますよ!
このページは、女性誌「FRaU」(2014年)に掲載された
「エンタメPR会社 オフィス・ヨネクラ」を加筆、修正したものです。
『恋するリベラーチェ』
’70年代に一世を風靡したエンターテイナー、リベラーチェの晩年の恋をスティーヴン・ソダーバーグ監督が映画化。実話をもとに、スターの生態と愛を描き、濃密なラブストーリーとして成立させた。マイケル・ダグラスの演技は高い評価を得て、数々の賞を受賞している。