米倉涼子さんが、過去に観た映画を紹介するアーカイブ コレクション。
そのときに観た映画から、米倉さんの生き方、価値観が垣間見えます。

Weinstein Company / Photofest / ゼータイメージ

救われない気持ちになるという意味では『ブルージャスミン』と共通しているのが、『8月の家族たち』。こちらは母娘を演じたメリル・ストリープとジュリア・ロバーツが、アカデミー賞にノミネートされていました。まさに“演技対決”ともいうべきぶつかりあいで、観ているとちょっと疲れるところも(笑)。

もとが戯曲だからか芝居にスポットがあたっていて、私たちプロフェッショナルな女優よ! という意識がすごく見える作品になっているんですね。母親と長女のぶつかりあいは凄まじく、何と取っ組み合いのケンカをするシーンもあります。
私は姉妹がいないので女ばかりの家族ってこんな感じなのかな? と思いながら観賞しましたが、同じような家族構成の人が観たら“あるある”の連続かもしれません。

強烈にアピールする女優陣よりも心に残ったのは、いつもパンフレットを見るまでこの人が出演していたことに気づかないほど、作品ごとに違う顔を見せてくれる長女の夫役のユアン・マクレガー。ある秘密を持つ親戚の青年を演じたベネディクト・カンバーバッチも心優しい穏やかな役柄でとてもよかった!
『レインマン』を演じられそうな雰囲気で、『スター・トレック イントゥ・ダークネス』との印象の違いに驚かされました。観るのに気力は要るけれど、豪華な俳優たちがそれぞれの魅力を出し切った見事な家族の崩壊劇だと思います。

『8月の家族たち』
蒸し暑い8 月のオクラホマ。父親が失踪したという知らせを受けて、疎遠になっていた三姉妹がガンを患う母の待つ家へと集まる。ピュリッツァー賞とトニー賞を受賞した戯曲を、豪華キャストで映画化。治療薬を大量に摂取して威圧的になった母親をメリル・ストリープが、生真面目ゆえに対立する長女をジュリア・ロバーツが演じている。

取材・文/細谷美香
このページは、女性誌「FRaU」(2014年)に掲載された
「エンタメPR会社 オフィス・ヨネクラ」を加筆、修正したものです。