秘書は未婚女性のみ、女性はパンプス義務……驚愕のハラスメント社則_img0
 

とある大企業で働いている友人に聞いてぶっ飛んだお話。
そこで秘書として働いている彼女に、何の気なしに「秘書は女性だけ?」と聞いたら、帰ってきた答えは「女性だけ、それも未婚女性だけ」。これが社内ルールとして決まっているっていうんだから驚きですが、その理由にはさらなる衝撃が!

「結婚すると秘密を守れないから(だってさ!アホかっつうの!と彼女は続けましたが)」。

えええと、女性は結婚すると「ご主人様」に何でも言っちゃうってこと? お前は妻なのに、主人である俺に秘密を作るのか!と言われたら、今週末に常務が行く予定の大事なジンバブエ出張のことを言わずにはいられませんでした、みたいな? それともそれとも、今週は大事なジンバブエ出張がある、このことは僕と君との秘密だよ、ああ、わかりました常務……みたいな、重役と“社内妻”の尊敬とも恋ともいえぬ何かによってのみ、秘密は確実に保たれるとかそういうアレ?「重役=秘書の最愛の人」である状況を作らないと、女は信用できないってこと?

とひとふざけしたところで、私は考えました。このルールっていつ作られたのかしら。そこはかとなく漂う“昭和の秘書妄想”を思うと、もしかしたら創業当時の数十年前からあるものかもしれません。もはやそういった無根拠な諸々の差別(この場合は既婚者差別、そしてもしかしたら、本音のところでは女性の年齢差別)が完全にアウトな時代に、なんでこんな社内ルールが残っちゃっているのか。「なんで?」と問う人がいなかったからでしょうか。でもでも、それこそなんで?例えば、結婚した後も秘書として働きたいという女性とか、結婚したとしても引き続き同じ秘書に担当してもらいたいという重役とか、いなかったのかなー。なんで誰も「なんで?」って聞かないの?


そんなことをきっかけに、意味不明な社内ルールとか「ハラスメント社則」みたいなものに興味を持ち始めた私ですが(もしウチの会社も!という方は、ぜひコメント欄に!)、その最近事例が「広がる「#KuToo」職場でのパンプス強制反対署名、1万人超える」です。「企業による女性へのパンプスの強制」を禁止するよう、厚生労働省に通達を出してほしい!企業に通達を出してほしい!――つまり早い話が、仕事中のパンプスって足痛いし疲れるし、別に履く必要ないんでは?履きたい人ははけばいいけど、強制されることではないんでは?という署名運動です(♯Metooならぬ♯Kutoo、クツがクツーっていうのが上手い!)。

秘書は未婚女性のみ、女性はパンプス義務……驚愕のハラスメント社則_img1
 

そんな社則の会社が!と驚愕しましたが、このネタでネットを掘ってみると実際にあるらしい。とはいえ社則としてなかったとしても、社内ルールとして当たり前のようになっているところもあるようです。これが女性だけに、さも「マナー」であるかのように課せられることは、電通で自殺した高橋まつりさんが「女のくせに化粧くらいちゃんとしてこいよ」と言われたセクハラと同じ理由でアウトに近いと思うんですが、まあそういうことはほかの人が書いているんで置いといて。


「そうはいっても……」が支える、職場の我慢大会


私が興味深く思うのは、こうした理不尽なルールや社則を「理不尽」と思わない人――「社則として決まってるなら従うべき」と言う人――が、日本にはどうやら相当数いるっぽいことです。江戸時代くらいの、お殿様と藩がいてこその自分!とか、たとえ理不尽であってもお上に従うことが武士の本分!美しい!みたいな世界が、今も厳然とあることに私は愕然とします。

集団のルールってそもそもそこに属している人たちが共有する目的のため、もしくは互いに気持ちよく過ごすためにあるもので、当然ながら時代とか環境によって変化してしかるべきもの。そもそも国の法律ですらそうやって変化しています。

にもかかわらず、かなり時代錯誤で、作られた当時に想定した機能はもはやなく、逆に弊害となっている可能性さえあり、今の時代においては合理的な説明もできないようなルール――時にルールですらない、不文律や慣習のようなもの――を、ルールだからそういうものだからの一点で守り、「従わないなんてワガママ」と他人にも守らせようとする人たちの精神性には、心底驚かされます。こういう人は、上からの“お達し”以外では動かない。この署名が「厚生労働省宛て」なのは別の事情からでしょうが、実はすごく的を射ているとも思います。

こういう風に言うと、もしかしたら「女性はオフィスカジュアルだけど、男性はスーツにネクタイで我慢してる」と言い出す人もいますね。私も激しく同意見です。もはや世界で一番暑いんではと思いたくなる日本の夏の灼熱に、ネクタイをしていることの意味が、私にはずーっとわかりませんでした。パンプス同様、病気になっちゃうし、仕事のやる気も効率もダダ下がりなのは火を見るより明らかです。こういう状況で「みんな我慢してるんだから……」と話を収めようとする人が、私にはよくわかりません。女性がパンプス止めると男性がお腹痛くなる、男性がネクタイ止めると女性の鼻がもげる、とかいうような大変な事情があるならまだしも、そういう事情が全然ないのに仕事の効率下げてまで何の我慢大会? 何かの罰ゲーム? 嫁姑?私が我慢したんだから、嫁も我慢しろみたいな感じ? 物理的な不都合があるわけじゃなし、どっちも嫌ならどっちも我慢せず、協力して両方ともやめる方向で動けばいいのでは? 男性もネクタイの強制やめての署名活動、したらいいのになあ。国が「ヒートアイランド防止!エコロジー!」と音頭取れば、「夏のノータイ」なんて簡単なはず。

もちろん最後にして最大の敵は「そうはいっても……」の思考回路。これは一人一人が、心して打ち砕いていかねばなりません。