シソンヌじろう、『バイプレイヤーズ』、『ウレロ★』脚本家らが参加


もちろん、このドラマはVチューバーが演じるドラマであることが売りのひとつでしょう。でもそれ以上に、生身の役者が登場するものがドラマで、2次元のものはアニメだといった固定概念を払拭させる作品であることが注目すべきポイントなのだと思います。

そう感じさせるベースにあるのが制作体制です。独自の世界観を描くことに長けた脚本家が並んでいます。話題をさらった『バイプレイヤーズ』のふじきみつ彦、『ウレロ★』シリーズでおなじみの土屋亮一、お笑いコンビだけでなく、俳優・脚本家としての顔を持つシソンヌ・じろうなど。また企画協力には『勇者ヨシヒコ』の酒井健作。テレビ東京らしいドラマを輩出してきた面々です。

また監督は監督で、女子ドラマに持ってこいの面々が参加しています。『架空OL日記』の住田崇、乃木坂46のミュージックビデオを手がける湯浅弘章など。このほか、スタイリングから音楽まで、数々の映画・ドラマを手がけている制作陣がドラマを味付けます。

そして、編成面においてもテレビ東京のカテゴリーに対する柔軟性を感じます。これをアニメ枠ではなく、レギュラーのドラマ枠に編成しているからです。Vチューバーのドラマとして興味を持つ層にも、この枠に視聴習慣があるドラマファンにも、双方にアプローチできるでしょう。一方で、その逆の可能性もはらむわけですが、Vチューバー出演ドラマという新しいジャンルを育てていくのにあたって、「守り」よりも「攻め」を選択。そうすることによって広がる可能性を見据えているのでしょう。

 

中国「ビリビリ動画」で同日配信、Vチューバー作品の需要開拓


その視野の先にあるのは日本だけではありません。海外も含まれます。今回、中国で10代の若者から支持される動画配信プラットフォーム「ビリビリ動画」で同日配信も予定しています。テレビ東京制作のアニメ作品が中国で同日配信されることは既に当たり前のように行われています。そのルートを活かして、Vチューバー作品に対する需要も広げていくことを狙っています。海外にも放送、配信することによって制作費を回収し、収益に結びつけるモデルを描いているからです。

国内ではこのドラマと完全連携したコミカライズの展開も始まります。これまでのコミックからドラマ化の流れとは逆。Vチューバーのドラマをベースにコミカライズするといった新しい流れも試みます。講談社が運営する「ILLUST DAYS」というクリエイター向けのポートフォリオサイトで連載の作家を一般公募しました。これもやはり、作品が広がるきっかけをあらゆるところに種まきし、育てていくことが狙いです。

昨今、いくら話題を集めても、一過性のものに終わってしまいがち。あっという間に話題の中心から離れていきます。だから、史上初のVチューバードラマとして打ち花火を上げるだけでは意味がありません。体制を固め、今後の展開に繋げていく。そんなあるとあらゆる仕掛けが大事なのです。半歩先ゆくテレ東。この作品にもそんなテレ東らしさがあります。

<作品紹介>
『四月一日さん家の(わたぬきさんちの)』

テレビ東京 テレビ大阪 他にて4 月 19 日(金)スタート
毎週金曜深夜 0時52分〜1時23分放送
企画・構成:酒井健作
脚本:ふじきみつ彦、じろう(シソンヌ)、土屋亮一、堀雅人、熊本浩武
監督:住田崇、湯浅弘章、渡辺武、太田勇
出演:ときのそら、猿楽町双葉、響木アオ

 

メディアジャーナリスト 長谷川 朋子
1975年生まれ。国内外のドラマ、バラエティー、ドキュメンタリー番組制作事情を解説する記事多数執筆。カンヌのテレビ見本市に年2回10年ほど足しげく通いつつ、ふだんは猫と娘とひっそり暮らしてます。

構成/榎本明日香、片岡千晶(編集部)

 

著者一覧
 
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映画ライター 細谷 美香
1972年生まれ。情報誌の編集者を経て、フリーライターに。『Marisol』(集英社)『大人のおしゃれ手帖』(宝島社)をはじめとする女性誌や毎日新聞などを中心に、映画紹介やインタビューを担当しています。

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文筆家 長谷川 町蔵
1968年生まれ。東京都町田市出身。アメリカの映画や音楽の紹介、小説執筆まで色々やっているライター。著書に『サ・ン・ト・ランド サウンドトラックで観る映画』(洋泉社)、『聴くシネマ×観るロック』(シンコーミュージック・エンタテイメント)、共著に『ヤング・アダルトU.S.A.』(DU BOOKS)、『文化系のためのヒップホップ入門12』(アルテスパブリッシング)など。

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ライター 横川 良明
1983年生まれ。大阪府出身。テレビドラマから映画、演劇までエンタメに関するインタビュー、コラムを幅広く手がける。人生で最も強く影響を受けた作品は、テレビドラマ『未成年』。

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メディアジャーナリスト 長谷川 朋子
1975年生まれ。国内外のドラマ、バラエティー、ドキュメンタリー番組制作事情を解説する記事多数執筆。カンヌのテレビ見本市に年2回10年ほど足しげく通いつつ、ふだんは猫と娘とひっそり暮らしてます。

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ライター 須永 貴子
2019年の年女。群馬で生まれ育ち、大学進学を機に上京。いくつかの職を転々とした後にライターとなり、俳優、アイドル、芸人、スタッフなどへのインタビューや作品レビューなどを執筆して早20年。近年はホラーやミステリー、サスペンスを偏愛する傾向にあり。

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ライター 西澤 千央
1976年生まれ。文春オンライン、Quick Japan、日刊サイゾーなどで執筆。ベイスターズとビールとねこがすき。

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ライター・編集者 小泉なつみ
1983年生まれ、東京都出身。TV番組制作会社、映画系出版社を経てフリーランス。好きな言葉は「タイムセール」「生(ビール)」。

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ライター 木俣 冬
テレビドラマ、映画、演劇などエンタメを中心に取材、執筆。著書に、講談社現代新書『みんなの朝ドラ』をはじめ、『挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ』ほか。企画、構成した本に、蜷川幸雄『身体的物語論』など。『隣の家族は青く見える』『コンフィデンスマンJP』『僕らは奇跡でできている』などドラマや映画のノベライズも多数手がける。エキレビ!で毎日朝ドラレビューを休まず連載中。

 
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