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コンビニや居酒屋などで、外国人の店員さんと接することが増えてきているのではないでしょうか。4月には外国人労働者の受け入れ資格が拡大され、このような機会は今後ますます増えていきそうです。共生をしていくうえで、日常生活でどのような心構えでいたらいいのでしょうか。

シンガポールは、労働力人口の4割近くが外国人で、特に低賃金労働は母国での賃金が低い国からの出稼ぎ労働者が担っています。最低賃金がなく、家族を同伴することもできず、ときに劣悪な環境に置かれていることもある外国人労働者。シンガポール社会でも問題が指摘されています。

先日、シンガポール国立大学で、移民問題を議論するパネルディスカッションがあり、聴講に行ってきました。主に建設現場で働くバングラデシュ人の支援を手がける非営利組織の代表らが登壇し、労働者の置かれた環境について議論をするものでした。

その中で、シンガポールの制度的な改善点などもさることながら、登壇者の一人が言った言葉が印象的でした。

「バングラデシュ人労働者が母国の両親や親戚によく聞かれる質問のナンバー1が、シンガポールってどんなところか。その次に、よく聞かれるのが、シンガポール人の友達は何人できた?というもの。これには皆、言葉に詰まる」

彼らは5~7年も家族に会えないということもあり、孤独だから、街で会ったら「Hi」、掃除をしていたら「Thank you」と言ってほしい―。そのように支援団体の代表は言っていました。

アメリカの社会学者・マートンが提唱した「自己成就的予言」(予定の自己成就)という概念があります。これは例えば、ある銀行の信用が揺らいでいるとの誤った認識が広がると、預金の払い戻し希望が殺到し、たとえ信用不安が事実ではなくとも実際に潰れてしまう、といった現象を指します。

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実は、マートンは当初の論文で、これを人種差別のケースにも当てはめて使っています。つまり、異なる人種間が分かり合えることはないだろうと排斥的なコミュニケーションをとっていると、実際に対立が起こりやすくなってしまう、ということです。

たとえば、白人で構成されている労働組合が、黒人はスト破りをしそうだから入れてあげない、といったことを続ける。そうすると、実際に黒人は組合と協調せず、スト破り的な行動をとることになる。一方、白人と黒人が半々に住むことが計画された共同住宅のケースでは、最初は白人の多くが、人種間の関係がスムーズにいくことを期待していなかったものの、実際に暮らしてみるとその4分の3が「うまくやっていける」ことに気が付いた————。こうした事例が挙げられています。

日本でも技能実習生の失踪問題などが取り沙汰されていますが、「どうせいなくなってしまうから」と親身に接しなかったり、悪条件で働かせることが、実習生側に逃亡する理由を与えてしまっている可能性があると思います。また、自分が相手を信用して、万一裏切られた時の代償が大きすぎる、だから最初から信じない、といったゲーム理論の「囚人のジレンマ」的均衡に陥っているようにも見えます。

外国人の増加で「治安の悪化」を懸念する人がいますが、治安が悪化しそうだからと排斥し、支援せずにいれば、困窮から実際に治安の悪化が起こるかもしれない。私たちはこうしたことが起こることを予測して、信頼のシステムを築かなければならないでしょう。その一歩として、街で出会う外国人には、「こんにちは」「ありがとう」を言ってみる。多少意識的にやっていきたいものです。