ちょうど、この11回、昭和編で、田畑政治(阿部サダヲ)がストックホルムオリンピックの記録映像を見て(はじめて映像に収められたオリンピックだったそうです)、東京オリンピックは黒澤明監督が撮るらしいと話しています。結局、市川崑監督が撮ることになるのですが、オリンピック映像を撮ることは国家をあげての大仕事。有名なオリンピック記録映画に、レニ・リーフェンシュタールのベルリンオリンピックの映像があります。「民族の祭典」編と「美の祭典」編があって、「民族の祭典」編は、開会式、円盤投げ、ハードル、砲丸投げ、短距離走、高跳び、マラソンなどの試合の記録が颯爽と綴られています。まるで「いだてん」みたいと言いたいところですが、「いだてん」の場合、登場人物たちがかっこよ過ぎず、むしろ弱々しい。無様と言ってもいい。でもそこが愛らしい。


助っ人再び


さて、足袋職人・黒坂役を演じていたピエール瀧さんの代役は、三宅弘城さんが決まったそうです。三宅さんはナイロン100℃に所属する俳優で、事務所は大人計画、宮藤官九郎さんとはグループ魂のバンドのメンバーです。以前、劇団☆新感線の舞台『鋼鉄番長』で主役の橋本じゅんさんが公演中の怪我で降板を余儀なくされたとき、代役を引き受けて、4日間という短い期間で芝居を仕上げ、観客を連日沸かせたことがありました。このとき、ポスターも劇中映像も再撮したそうで、橋本さんと三宅さんでのところだけすげ変えるのかなと御本人は思っていたら全部撮り直して驚いたとか。代役を引き受けて舞台に立つまでのことはまるで『江夏の21球』のようだったというようなことを以前インタビューで語ってくれたことがあります。助っ人再び。三宅さんがんばれ。ちなみに三宅さんは、NHKではありませんが、小河ドラマ「織田信長」、「龍馬がくる」で主役(信長と龍馬)を演じていらっしゃいます。こちらも面白いんですよ。

【データ】
大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺(ばなし)〜』


NHK 総合 日曜よる8時〜
(再放送 NHK 総合 土曜ひる1時5分〜) 
脚本:宮藤官九郎
音楽:大友良英
題字:横尾忠則
噺(はなし):ビートたけし
演出:井上 剛、西村武五郎、一木正恵、大根仁
制作統括:訓覇 圭、清水拓哉
出演:中村勘九郎、阿部サダヲ、綾瀬はるか、生田斗真、森山未來、役所広司 ほか

第12回 「太陽がいっぱい」 演出:一木正恵

 

ライター 木俣 冬
テレビドラマ、映画、演劇などエンタメを中心に取材、執筆。著書に、講談社現代新書『みんなの朝ドラ』をはじめ、『挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ』ほか。企画、構成した本に、蜷川幸雄『身体的物語論』など。『隣の家族は青く見える』『コンフィデンスマンJP』『僕らは奇跡でできている』などドラマや映画のノベライズも多数手がける。エキレビ!で毎日朝ドラレビューを休まず連載中。

構成/榎本明日香、片岡千晶(編集部)

 

著者一覧
 

映画ライター 細谷 美香
1972年生まれ。情報誌の編集者を経て、フリーライターに。『Marisol』(集英社)『大人のおしゃれ手帖』(宝島社)をはじめとする女性誌や毎日新聞などを中心に、映画紹介やインタビューを担当しています。

文筆家 長谷川 町蔵
1968年生まれ。東京都町田市出身。アメリカの映画や音楽の紹介、小説執筆まで色々やっているライター。著書に『サ・ン・ト・ランド サウンドトラックで観る映画』(洋泉社)、『聴くシネマ×観るロック』(シンコーミュージック・エンタテイメント)、共著に『ヤング・アダルトU.S.A.』(DU BOOKS)、『文化系のためのヒップホップ入門12』(アルテスパブリッシング)など。

ライター 横川 良明
1983年生まれ。大阪府出身。テレビドラマから映画、演劇までエンタメに関するインタビュー、コラムを幅広く手がける。男性俳優インタビュー集『役者たちの現在地』が発売中。twitter:@fudge_2002

メディアジャーナリスト 長谷川 朋子
1975年生まれ。国内外のドラマ、バラエティー、ドキュメンタリー番組制作事情を解説する記事多数執筆。カンヌのテレビ見本市に年2回10年ほど足しげく通いつつ、ふだんは猫と娘とひっそり暮らしてます。

ライター 須永 貴子
2019年の年女。群馬で生まれ育ち、大学進学を機に上京。いくつかの職を転々とした後にライターとなり、俳優、アイドル、芸人、スタッフなどへのインタビューや作品レビューなどを執筆して早20年。近年はホラーやミステリー、サスペンスを偏愛する傾向にあり。

ライター 西澤 千央
1976年生まれ。文春オンライン、Quick Japan、日刊サイゾーなどで執筆。ベイスターズとビールとねこがすき。

ライター・編集者 小泉なつみ
1983年生まれ、東京都出身。TV番組制作会社、映画系出版社を経てフリーランス。好きな言葉は「タイムセール」「生(ビール)」。

ライター 木俣 冬
テレビドラマ、映画、演劇などエンタメを中心に取材、執筆。著書に、講談社現代新書『みんなの朝ドラ』をはじめ、『挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ』ほか。企画、構成した本に、蜷川幸雄『身体的物語論』など。『隣の家族は青く見える』『コンフィデンスマンJP』『僕らは奇跡でできている』などドラマや映画のノベライズも多数手がける。エキレビ!で毎日朝ドラレビューを休まず連載中。

 
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