「令和」の時代に知っておきたい排外感情の構造_img0
 

新しい元号「令和」が発表されました。従来のように中国の古典ではなく万葉集からということで、海外メディアの中には右傾化の懸念を示す見方もありました。しかし込められた意味がどうであれ、これからの時代、日本がますます色々なものを海外から取り入れていかないといけなくなることは間違いありません。

4月から外国人労働者の受け入れ資格が拡大され、単純労働のために入国する外国人が増えることが予想されます。欧米でも移民に対する排外感情が高まっているとのニュースが度々流れる中、日本は大丈夫でしょうか。

2018年末時点の日本における在留外国人は、国別では中国が最多で全体の3割近くを占め、韓国、ベトナム、フィリピン、ブラジルと続いています。排外主義の対象は、一般的には領土問題などの地政学的な関係性、テロなど安全保障面での脅威、それから様々な言説によっても変わるといいます。

早稲田大学教授の田辺俊介氏「現代日本社会における排外主義の現状」(2018年、『排外主義の国際比較』)によると、現状の日本では、アメリカ人やドイツ人、日系ブラジル人などに対しては受け入れに賛成の意見が多いのに対し、韓国人や中国人に対しては排外感情が高いという調査結果があります。

でも、前回の記事でもふれたように、「○○人」に対するイメージは、カテゴリ化されたステレオタイプでしかないことを覚えておく必要があると思います。

アメリカの移民経済学者ジョージ・ボージャス氏は著書『移民の政治経済学』の中で、どこの国出身かによって米国内で扱いや見られ方が異なることについて、次のように説明しています。

たとえば社会保障などによって所得が平等に分配されているデンマークやスウェーデンなどで高いスキルを持つ人は、自国よりも、米国に移住したほうが利益を得やすい。そうすると、一般論として、デンマーク人やスウェーデン人の中でも、相対的にスキルが低い人のほうが自国に残りやすく、スキルがある層が移住してくるので、米国側ではこうした国の出身者には「高度人材」のイメージがつく。

これ対して、ホンジュラスやハイチなど所得格差が大きく、低賃金労働者がかなり貧しい生活を送っている一部の発展途上国では、高技能労働者は重宝され、母国を出るインセンティブがない。反面で、低技能者には米国移住のメリットが大きい。そうすると、米国に来るホンジュラス人やハイチ人は自国に残る人たちよりも低スキルである可能性が高い――。

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もちろんこの説明自体が、スキルに対するある種のステレオタイプを再生産している側面もあります。が、米国で「デンマーク人やスウェーデン人は優秀で、ホンジュラス人やハイチ人は劣っている」という見方があるとすれば、それは国際的な経済的環境の格差や移民制度が生み出した偏見だ、ということは分かっていただけるのではないでしょうか。

私が今住んでいるシンガポールではビザの関係で、外国人はその出身国によっておおまかに職業が分かれています。ウエスタン系や日本人など先進国ならいわゆる高度人材、バングラデシュなど南アジア方面出身男性は建設や清掃、フィリピンやインドネシアから来ている女性だったら家事労働(住み込みメイド)に従事しているケースが多い……といった具合です。

しかし、それも国際的な経済格差によってそうなっているだけ。目の前にいる相手のことを、できるだけステレオタイプ化せずに見つめること、送り出し国の背景やグローバルな経済構造に少し考えを振り向けながら、コミュニケーションを取りたいものです。