【波に兎文様】パワースポット竹生島へ
皆さまこんにちは! 今回は可愛いうさぎのお話です。早速ですが、こんな図案をどこかでご覧になったことはありませんか?
波間に兎が跳ねています。うんうん、見たことあるような……でもなんで水の上? よく考えたらありえない光景ですよね。そして、ここは海? それとも川?
じつは答えは「湖」なんです。
この文様はお能の演目「竹生島」のこんな一節から着想を得たもの。
「魚木に登る気色あり。月海上に浮かんでは兎も波を奔るか面白の島の景色や」
これだけでは正直さっぱり……現代風にいうと「魚の影がまるで木に登っているかのように泳いでいて、月が琵琶湖に映っていると月に住むといわれている兎も波間を走っているようにみえるものですね。なんと素晴らしい島の景色でしょう」というような意味になります。この一節から「波に兎」という図案自体を「竹生島」とも呼ぶようになりました。
このお話に出てくる竹生島は、実際に琵琶湖に浮かぶ島。神の住む島として古くから崇められており、パワースポットとしても全国的に有名です。先日、こちらへひとりで兎を探しに(遊びに)行ってまいりました。
まずは京都から電車で琵琶湖のほとり、近江今津へ。そこから船で向かいました。
島には20分ほどで到着。フェリーが再出航するまでの70分ほどが滞在時間です。
まずは165段(!)の急な石段を登って宝厳寺さんへ。
続いて、国宝「舟廊下」を通って都久夫須麻(つくぶすま)神社へ。
こちらのご祭神は龍神さま。湖を望む竜神拝所は風が通りとても心地よい場所でした。
この他にも見所が多く景色も素晴らしく・・・とにかく心地が良いので(パワースポットってこういうことなのかも)また絶対来ようと思ったのでした。
最後にお能の「竹生島」のあらすじをご紹介。
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竹生島を参拝しようとやってきた朝廷の臣下たち。たまたま見つけた釣舟に、島まで便乗させてほしいと持ちかけます。舟に乗っていた翁と若い女は承諾し、一行は舟で竹生島へ(ここで先ほどご紹介した兎の一節がでてきます)。島に女性も一緒に上陸すると、臣下たちが「この島は女人禁制の聖域では?」と不審がります。すると「もともと弁財天は女性やのに、なんで女性が参ったらあかんねん」と翁に諭されて……じつはこの翁は龍神の化身で、若い女性は天女だったのです……。
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なんだか今の世相に通ずるようなお話ですね。大昔から仏や神の前では男女は分けへだてないという思想があったと言われていますが、お話になるくらいですから、実際は様々な場面で差別はあったのでしょう。
美しい島で今も昔も変わらぬテーマについて考えました。
<5月9日 刊行予定!>
『繡えども繡えども』
著者 長艸敏明
A24判 192ページ/ 講談社
長艸敏明氏は歩さんの義父。刺繡作家、京繡伝統工芸士である氏の作品集が出版されます。着物や帯のほか、季節ごとのしつらえや婚礼衣装などの祝い着、祭事の修復や復元まで京繡の第一人者である著者の“刺繡の力”を堪能できる100点を掲載。
PROFILE 長艸 歩(ながくさ あゆむ)
1987年京都市生まれ。芸術大学にて絵画を学び、卒業後は京都の老舗日本茶メーカーで販売や広報として勤務。結婚、出産を機に夫の家業である「長艸繡巧房」にて伝統的な京都の刺繡「京繡(きょうぬい)」を学びはじめる。 現在は3歳と1歳の女の子を育てながら刺繡の技術の習得と、いままで触れる機会のなかったディープな京都文化の吸収に励んでいます。 Instagram(@sica.seka)でも刺繡や文様のことを発信しています。