先日、あるつながりで大学生と話す機会があり、真剣な表情で相談をされました。

「私、大学を卒業したらバリバリ働いてみたいなって思っているんですけど、同じくらい、専業主婦にもなりたいなって思っているんです。専業主婦になりたいっていうと、周りに笑われたりもするんですけど、自分が子どものころお母さんが家にいてくれて、それを自分の子どもにもやってあげたいなと思うと…」。

どこからどうアドバイスしようかなと思いつつ、まずは、「きっと素敵なお母さんなんだね」と言いました。「母のように子育てしたい」。専業主婦志望の女子大生からたびたび聞かれるこのセリフは、ある意味で、母世代の専業主婦たちがいかに素晴らしい育児をしてきたかの裏返しだと思います。

しかし、まず第一に、時代的にそういう幸せな専業主婦家庭が成立する条件はますます減少してきていて、なりたくてなれるものでもなくなってきていること。なるために努力するにしても、それは「稼ぎがいい結婚相手を探し、相手に好かれること」という方面での努力であり、かつ、めでたく結婚できたあとも良好な夫婦関係を続け、夫に死なれない(死なれてしまった場合は生命保険などで生き延びる)という様々な条件を要することなどをお話ししました。

彼女のケースではどうだったのかは分かりませんが、「お母さんみたいになりたい」と見えていたお母さん側は、本当に娘に自分と同じような道を歩ませたいと思っているかどうか。そこに飲み込んだ悔し涙や耐え忍ぶ日々があった人だっているのではないでしょうか。

 

一方で、残念ながら、働く女性は働く女性で、直面する壁が山ほどある世の中でもある。セクハラ、マタハラ、マミートラック…。だから諸手を挙げて、仕事の世界へようこそ!とも言えない。でも、長い人生、まぁ少なくとも専業主婦一本に絞らないほうがいいんじゃないのというようなことを言いました。

そして、いまだに大学生が「バリキャリ」か「専業主婦」かの二者択一で悩まなくてはいけないことにも、私たち世代及び私含むメディアの発信が足りていないのだなと思わされました。

確かに大学生から見たら、いまだに基本的な選択肢は新卒一括採用による就職だけ。その先のイメージは、その会社に長くいるのかな、どこかで辞めるのかな、転職とかできるのかな……というくらいの漠としたものかもしれません。

実際には、一度辞めても再就職をする人もいれば、私のようにフリーランスで働き続ける人も、起業をする人もいる……。様々な働き方を模索し、その背中をもっと見せていかないといけないなとも感じました。