週刊ポストの“働く女性の声を受け「無職の専業主婦」の年金半額案も検討される”という記事が大炎上しています。

夫の厚生年金に加入し年金保険料を支払わずに基礎年金をもらうことができる「第3号被保険者」について、共稼ぎの妻や働く独身女性などから「保険料を負担せずに年金受給は不公平」という不満が根強くあることから、将来の年金を半額にするなどの見直し議論がでている……という趣旨の記事です。炎上ポイントは、主に2つ。

1つ目は、年金見直しについて、実際はほとんどそのような形の不満は表立ってでていない(そもそも働く女性自身が主婦になることもあればその逆もあり、双方の立場は地続きである)にもかかわらず、「働く女性の声」のせいにして女性同士の対立を煽っていること。

実は、この第3号被保険者の分の保険料は、夫やその会社が払っているのではなく、独身や共働きの男女を含む第2号被保険者全体で支えています。また夫が自営業者の場合は、妻が専業主婦であっても第1号被保険者として保険料を負担しなくてはならない仕組みになっています。ですので、「働く女性の声」ではなく「独身や共働き、自営業者に比べて」であれば、実際に不公平な仕組みではあるはずです。これを女性のみの対立問題にしてしまったのは、ひとえに記事の書き方の問題でしょう。

炎上ポイントの2つ目は、女性が経済的自立を確保しにくい仕組み(男女の賃金格差や保育園の不足など)を放置しながら、また家事労働の大変さも知らずに、政府が主婦の年金を減らすあるいは負担を増やそうとしている点。1つ目の論点に目が行きがちですが、本質は2つ目の現在の年金の仕組みとその前提や経緯、そして今後の方向性のほうではないでしょうか。

そもそも国民年金が作られたのは1961年。1950年代半ばからの高度経済成長期に、都市部への人口流入とともに「サラリーマン」という働き方が激増した時代です。それまでの農業や自営業は女性も家族ぐるみで働き、子どもも家事や稼業に駆り出されていたわけですが、それに対し核家族で団地に住む「サラリーマン」スタイルは、男性が正社員で一家の稼ぎ主となり、専業主婦が支えることを前提としてきた仕組みでした。

 
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