米倉涼子さんが見た、最新のおすすめエンタメ情報をお届けします。
いろいろなタイプのクライム・ムービーがありますが、『アメリカン・アニマルズ』を観て最初に思ったのは、こんなおバカな人たちが起こした事件を映画にしちゃっていいの!? ということでした。
2004年にケンタッキー州の大学の図書館から高価な本を盗み出そうとした学生たちの実話を映画化した作品で、なんと実際の犯人たちも劇中に登場してインタビューに答えているんです。こんなにすぐに社会復帰できるの? 出演料が欲しかったのかな?…と頭のなかにはいくつも「?」が浮かびつつも、おもしろかったのは人によって証言や記憶が食い違っていること。
犯人たちが事件の裏側を語ってくれるなんて監督は映画を作りやすかっただろうなと最初は思いましたが、どれを信じればいいのか意外と選択が難しかったかもしれませんね。本人と、本人を演じる役者さんとの違いや似ているところをチェックする楽しさもあります。
それにしてもこんなに緻密さに欠ける窃盗計画が、本当にあった話だなんて!
志があるのかないのかよくわからないし、仲間の絆があるわけでもない。彼らはすべてが中途半端で我慢も頑張りも足りていないのに、これくらいは俺にだってできるはず! っていう考え方なんですよね。
これじゃあ何かを成功させてトップに立つことなんて無理だよ、と思ったけれど、逆に言えばこれが若者のリアルでもあるのかなという気もします。
ドキュメンタリーや実話の映画化が好きで、この連載でも前回の『RBG 最強の85才』などたくさんの作品を紹介してきました。
でもこの『アメリカン・アニマルズ』はほかに似ているものが浮かばないくらい個性的な作品。犯罪計画の中身は下らないけど映画としては新しい、オリジナリティのある“実話もの”では、ある意味ナンバー1の作品だと思います。
そんなに昔のことでもない不完全な犯罪をなぜ映画にしたんだろう? とちょっと不思議だったのですが、監督のなかには実話をただなぞるのではなくどう料理するのかが腕の見せどころ、という思いがあったのかも。
そして何事もやるなら徹底的に! という教訓が得られる映画でもあるので、そのあたりもぜひ注目してみてください(笑)。
『アメリカン・アニマルズ』
アメリカ・ケンタッキー州で退屈な大学生活を送るウォーレンとスペンサーは、自分が周りの人間と何一つ変わらない普通の大人になりかけていることを感じていた。そんなある日、2人は大学図書館に時価1200万ドル(およそ12億円相当)の超える画集「アメリカの鳥類」が保管されていることを知る。「その本が手に入れば、莫大な金で俺たちの人生は最高になる」そう確信したウォーレンとスペンサーは、大学の友人エリックとチャズに声をかける。『スナッチ』『レザボア・ドッグス』『オーシャンズ11』などの犯罪映画を参考に作戦を練ることにした4人は、特殊メイクで老人に扮し図書館に乗り込む計画を立てる。来たる決行日、老人の姿に変装した4人は図書館へと足を踏み入れる――。そこで彼らを待ち受ける運命とは?この前代未聞の強盗の結末は?事件を起こした本人たちを劇中に登場させ、実話を映画化した。
5月17日(金)より新宿武蔵野館/ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開
配給:ファントム・フィルム
提供:ファントム・フィルム/カルチュア・パブリッシャーズ
© AI Film LLC/Channel Four Television Corporation/American Animal Pictures Limited 2018
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