米倉涼子さんが、過去に観た映画を紹介するアーカイブ コレクション。
そのときに観た映画から、米倉さんの生き方、価値観が垣間見えます。

Warner Bros. / Photofest / ゼータイメージ

近未来を舞台にした映画はたくさんありますが、『her/世界でひとつの彼女』で描かれるのは、私たちの今の暮らしから見当がつきそうな近未来。車が一台も走っていないロサンゼルスや人々が休日を過ごすビーチの風景も、いわゆるSFっぽいというよりも現代に通じる雰囲気です。

そして私が何よりも、ありえそう!と感じたのは、離婚調停中の妻への思いをこじらせながら、バーチャルなものに恋する主人公の存在。日本の20代男性の童貞率は40%を超えている、なんてびっくりするようなニュースも聞こえてきて、生身の女性よりも人工知能型OS“サマンサ”を本気で愛してしまう主人公、セオドアのような人はたくさんいるのかも、と思ってしまいました。

サマンサを携帯にもダウンロードしてカメラを通じて外の世界を見せて、デート気分を味わうセオドア。心地いいことばかりを話してくれるサマンサに、どんどん依存して嫉妬までするセオドア……。もちろん夢のような時間が永遠に続くわけはなく、ふたりの恋はサマンサのある残酷な告白によって終わりへと向かっていきます。スカーレット・ヨハンソンのかすれた声もセクシーで、とても魅力的でした。

それにしても世の中のテクノロジーの目覚ましい進歩って、人類にとって本当にいいことなのか悪いことなのか。数年後には、この映画のようなことが現実に起こるような気がします。最後まで観てちょっと残念だ ったのは、で、この先どうなるの!? と一番気になるところが描かれないまま終わってしまったこと。『ゼロ・グラビティ』を観たときにも思ったことですが、最近のアメリカ映画には、起承転結にとらわれない脚本も多くなってきているのかもしれませんね。とはいえ、“結”がはっきりしていて、すっきりと映画館を出られるストーリーのほうが、私の好みに合っているみたいです(笑)。

『her/世界でひとつの彼女』
近未来のロサンゼルス。妻と離婚調停中のセオドアは、人工知能型OSをダウンロードする。セクシーで温もりのある声で話しかけてくる“サマンサ”は、ユーモアのセンスも抜群。自分の好みを理解して、日ごとに感情も豊かになっていく彼女にセオドアは恋をして……。

取材・文/細谷美香
このページは、女性誌「FRaU」(2014年)に掲載された
「エンタメPR会社 オフィス・ヨネクラ」を加筆、修正したものです。