定年後の再雇用も従来のイメージとはかなり違ってくるでしょう。政府は70歳までの雇用に努力義務を課しますから、社員が望めば企業は定年後もずっと雇い続けなければなりません。財界首脳の発言からも分かるように、同じ条件で社員を雇い続けるのは不可能ですから、定年後に再雇用される際には、年収が大幅ダウンとなるのは確実です。

さらに言えば、社内、あるいはグループ会社内に、その人に合う仕事が存在するとは限りません。場合によってはグループ内に人材派遣会社を作り、そこに転籍させた上で、まったく別の業種に派遣するというやり方も考えられます。つまり、書類上は同じ会社にいたとしても、事実上の転職を余儀なくされるということです。

ポスト終身雇用時代に、生き残れる人の条件_img0
 

確かに70歳までの雇用は保証されましたが、ただ漫然と会社にいるだけでは、望んだ仕事に就ける確率は低くなると考えた方がよいでしょう。生涯労働であればなおさらのこと、望まない仕事はできるだけ避けたいものです。一生涯、満足感を持って働き続けるには、40歳あたりから後半戦のキャリアについて明確にしておく必要があります。

組織内で出世して幹部になる人を除けば、後半戦のキャリアとしては、スペシャリストあるいは現場のベテランとして同じ組織で働く、転職や独立も含めて得意分野で仕事を続けるといった道筋を描くのが理想的です。もっとも大事なのは、評価に対する価値観を変えることです。

年功序列が基本だった従来の日本型組織では、ほとんどの人がゼネラリストとしての活動を余儀なくされていました。社内のルールに精通し、どの部署に行っても周囲とうまくやれる人が高く評価されたわけです。しかし、これからは職種に対する認識がより強くなってくるでしょう。

現場の仕事について豊富なノウハウがあり、それを若手に対して分かりやすく説明できるベテラン社員は、高齢になっても重宝されるはずです。昔の価値観や根性論だけを若手に押しつける中途半端な中間管理タイプの人は、新しい時代には歓迎されません。自分は何が得意で、そのノウハウをどうやって社内に提供できるのか、真剣に考えた方がよいでしょう。

こうした仕事のやり方が身に付いている人は、役職定年になっても、再雇用されても、そして転職することになっても、うまくやっていけるはずです。反対に、得意分野がなく、中間管理職だったこと以外に、特筆すべき事項がない人は、ポスト終身雇用時代には苦労するでしょう。
 

 
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