「ココロだけ?」「カラダだけ?」どっちなの? と割り切れない恋愛を描いて、大反響の『カカフカカ』。我がこととして、主人公と一緒に悩んで萌えていただける永遠のテーマに、作者・石田拓実先生のインタビューから迫ります。リアルな胸の高鳴りと締め付けを堪能できる恋愛ドラマの先には、現代の大人が抱える自己肯定感の低さ、傷つきやすい自意識の高さをどうすべきか――という深遠な考察へ!

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石田拓実 漫画家。1976年生まれ。大阪府出身。1993年「ぶ~けデラックス」秋号掲載『姉妹の法則』でデビュー。作品に『パラパル』、『はしたなくて ごめん』、『ジグ☆ザグ丼』などがある。現在は「Kiss」で”たたない”元彼とのやっかいな共同生活を描いたラブストーリー『カカフカカ』を執筆中。ドラマ『カカフカカ-こじらせ大人のシェアハウス-』(MBS 毎週木曜24:59~ほか)森川葵さん主演で大人気放送中。


主人公は、自信喪失ぎみの24歳フリーター・寺田亜希(演じるのは森川葵さん)。中学生時代はキラキラと自信にあふれ、承認欲求もそれなりに満たした過去があるものの、現在は就活に失敗したうえに彼氏の浮気で住む場所もなくなり、自己価値は“人生最安値”を更新中。今となっては、そんな学生時代を“自信過剰でイタイ”思い出として抱えつつ、友人に紹介してもらったシェアハウスで暮らすことに。なんと、そこには亜希の元カレかつ初めてのお相手にして、小説家・本行智也(演じるのは中尾暢樹さん)が。ここ2年ほど「たたない」カラダになっているという彼だが、なぜか偶然接触した亜希相手だけには「反応」する。「絶対ヘンなことはしない」という約束のもと、本行から復活の治療法として亜希は「添い寝」を頼まれるのだが……。

さらに、シェアハウスの同居人で編集者の長谷から突然求婚されたりと、人間模様は複雑に絡み合っていく。

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累計170万部(電子含む)突破の大好評シリーズ! 『カカフカカ』最新刊は8巻。主人公・寺田亜希は、初カレ兼はじめてのお相手だった本行智也とシェアハウスの同居人として再会。ここ2年ほど「たたない」彼が、なんと亜希にだけは「反応」アリ! 「寺田さんだけが、今んとこ唯一の希望なんだと思う」――初恋の相手から「カラダだけ」超特別扱いされて……。


承認欲求と自己肯定感のはざまでせめぎあう女心


編集部:主人公・亜希の自信のなさというか、自己肯定感の低さはすごく共感度が高かったです。10代の頃に持っていた根拠のない無敵感と自分は特別だと信じられること、それに比べて、大人になった今の「ただの人」感。思春期にはあったはずの自信はどこへ……。だから、誰かから求められる=承認欲求が満たされる=幸せになれる!と思ってしまうこの無限ループ……。身に覚えがありすぎます!

石田先生:大人になればなるほど、誰かから求められたり、肯定されたり、褒められたりするシーンはどんどん減っていきますよね。義務を怠って責められることはあっても、遂行して褒められることはないですからね。みんな誰かの「特別」にはなりたいものです。

編集部:2人の男性から求められる主人公ですが…かつての恋人・本行からはカラダだけ、同じくシェアハウスの同居人・長谷くんからはココロだけを求められるというこの設定! 震えます(笑)。2人の間で揺れる亜希を見るにつけ、誰かに必要とされている、愛されている、特別であるという実感なしに生きるのは難しいのでは?と思ってしまいます。石田先生は、どう思われますか?

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2人の男性からそれぞれの表現で「特別」扱い宣言される亜希。他者から必要とされ、求められてうれしくない人はいない。ただ、自己肯定感の低さに悩み、他者からの承認によって一気に自己肯定感を高めようとしてしまったら、よりわかりやすく深く求めてくれる相手を選んでしまうのだろうか。

石田先生:うーん、どうでしょうね。このテーマを突き詰めていくと、最後は自己肯定ってなんだろうね?っていうところにいくんですよ。最近、考えるんですけど、誰かに必要とされることが、必ずしも必要なのかどうか。もちろん、求められてうれしくないわけはないですが、必要不可欠かどうかと言われたらどうでしょうか。どうなんだろう、と思ってしまいます。

もちろん、どのみち誰かの家族だったり、友人だったり、親戚だったりしますから、完全に人間関係を断つことはできないのですが。ちょっとなにか考えてくださるきっかけになればうれしいです。

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「主人公・亜希は本行からカラダだけ特別扱いされている。みんなが欲しい“特別承認”を、もらってもうれしくないエリアに設定してみました。もともと極端な設定が大好きなんです♪」と石田先生。


自己肯定感の低さも自意識の高さも、
ひっくるめて自分を受け入れる


編集部:求められるのは心地良いですよね。自己肯定感とは結び付かないかもしれないけれど…。

石田先生:そうですね、人に依ることになってしまいますからね。それはそれでしんどい。100%体重かけるのは厳しいでしょう。

編集部:たとえば、離婚になったら全部終わりみたいなことでしょうか。承認欲求と自己肯定感をバランスよく…というのが理想? 先生ご自身はどういうタイプなんですか?

石田先生:私、自己肯定感はすごく低いタイプなんですよ。でも歳をとればとるほど楽になってきます。昔は自己肯定感が低いことをすごくダメなことのように思っていたんですが、今は「はい、私低いです!しゃーない」みたいな割り切り感があります。

編集部:自己肯定感の低さは主人公・寺田亜希くらいですか!?

石田先生:そうですね。私自身のことで言えば、思想はあかり、思考パターンは亜希タイプなんですよ。もともと、無駄な思考はしたくないという合理主義者なんですが、突き詰めると、そもそも無駄な思考なんてありますか? という自問自答な感じも。学生の頃から自意識は高いほうでしたが、これはなかなか大人になっても治らないですね。

編集部:でも楽になりますか?

石田先生:そう、すごく楽に生きやすくなりますよ。自分は「自己肯定感が低い」「高め自意識が在る」ということを嫌がらなければ、将来的に“在るだけのもの”になりそうな予感がしています。まずは自分を好きになろう、とかね、よく言われますけど、それができたら苦労しない(笑)。

編集部:他人と比べたりされますか? 例えば、同業者の方の経歴とか…。

石田先生:目標にはしますね。あの人3本描かれたから私もがんばらねば!っていう勝手にライバル視(笑)。励みですね。マラソンで前を走ってくれているペースメーカーです。で、その方がぶっちぎりになると、ペースメーカーを別のほどよい方に替えます(笑)。他人は基本うらやましいものです、何かしら。どこか。「いいな!」って思いながら見てますよ。うらやましいは悪くないですよ。ただの「いいなぁ」ですから。

あとは、年をとると人のダメなところが素敵に見えたり、可愛いく思えたりするので、お得です。私自身、可愛いものが格段に増えました! 隣の席に座っていたおじさんがトイレに行って帰ってきたとき、手からニベアの匂いがしたら、「奥さんに言われて塗ってるんやろか」とかね。ある行為の背景を思うと、どんどん可愛いが増えていきますよ。

編集部:先生、観察眼と妄想力がありすぎます! その可愛さは男性から女性へも抱かれるものでしょうか?

石田先生:はい、それはあると思います。キャリアウーマンがソフトクリームを食べるのがめっちゃ下手とか。同性でも可愛いってなりそうですけど。ベタですけどね。スキがポイントになりますし、スキのない人はいませんから。みなさんも、年をとるのがどんどん楽しくなると思いますよ。

 
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