更年期による自律神経の乱れから、やる気がしない、イライラする、落ち込む……といった精神的な不定愁訴に悩まされている人は多いもの。女性にとって身近で気兼ねなく相談できる生涯のかかりつけクリニックを目指し、婦人科診療とエイジングケアの最先端治療をおこなっている『成城松村クリニック』の松村圭子院長は、「無理に頑張ろうとするのではなく、ペースを落とす時期と考えて」と警鐘を鳴らしています。
仙台みーこさんからの質問
Q. とにかくやる気がでない、疲れがとれない。
体調が安定しないので、予定を入れるのも億劫になっています。
現在46歳。以前婦人科に相談した際は「更年期の不定愁訴かと」と、さらに漢方内科に相談した際は、「更年期と自律神経の乱れかと」とアドバイスを受け、漢方も飲んだのですがあまり改善せず。同世代でも元気に旅行、仕事をされている方もいて、個人差もあると思うのですが、自分が弱いからなのかと落ち込みます。家事も以前よりすごく時間がかかってしまいます。イライラして子どもにあたってしまい、そんな自分にがっかりすることも多々ある状態です。パートの仕事でも、ちょっとしたことにイライラしてしまいます。また、将来のことを考えると急に不安になります。現実的に考えれば、そんな悲観するようなことが起きる可能性は低いし、起こった場合でも、生活のレベルを下げれば生きてはいけるので、今そんなことでクヨクヨしてもと思うのですが。不安に襲われると眠れなくなるのです。疲れると頭痛、めまい、腹痛、下痢を起こします。早めに寝る、家事も以前にくらべてかなり手を抜くなど、無理をしないよう気をつけているのに体調が悪くなるのがまたストレスです。どうしたら気持ちが上向き、元気に過ごせるのでしょうか。毎年健康診断は受けており、特に問題はない状態です。
特別ゲスト 松村圭子先生の回答
A. 頑張れる方法を考えるのではなく、
頑張れない時期に入った、と認めることが大事なのです。
更年期というのは、「今までとは同じではない」ということを自覚する時期でもあるのですね。だからスピードを緩めましょう、というメッセージでもあると私は思っているのです。徹夜を含め、頑張れば大抵のことはできていたこれまでとは、体も心も違ってきている、さらに、若い頃とは抱えているものも大きく違ってきています。そういったことを認めてペースを緩めてあげる。仙台みーこさんにも、まずは「そういう時期なんだ」と認識することから始めてほしいと思います。
それでなくとも、更年期に差しかかる年代というのは様々なストレス源を抱えているものです。さらに昨今は、そのストレス源も多様化していますよね。仕事、子育て、人付き合い、SNS……、抱えているものが多すぎになっていると思うのです。ですから、そもそも「こなせない自分」と思うのは違う。そうではなく、「たくさん抱えすぎている自分」であることを自覚されてください。そして、少し荷物をおろしてほしいと思います。
では、どれからおろしていけばいいのか? 家族のことや子育てのことなどは、なかなか優先順位を後ろに下げにくいと思われます。ですが、「今朝はちょっとしんどいからご飯を作れないわ」というぐらいのおろし方は、されても良いのではないでしょうか? 掃除だって、1日や2日くらいしなくても、病気になったりはしません。そういう「これは無理にやらなくても大丈夫かな」というところで、ペースを緩めていってください。
家事も、「贅沢だから」と引け目を感じず時には外注したり、もっと旦那さんにやってもらうようにしたり、「◯曜日は外食デー」と決めたりしてはどうでしょう? なのに皆さん本当にマジメで、おろすどころか、頑張れなかったり時間がかかったりしてしまうことで自己嫌悪になっている。そうしてさらに体調が悪くなるという、悪循環を起こしている気がします……。
仙台みーこさんは「どうしたら気持ちが上向きになるのでしょうか?」と書かれていましたが、そんなふうに「上向きにならなきゃ」と思うことも、かえって自分を追いつめてしまいます。そうではなく、「人生、こういう時期もあるよ」くらいに思ってください。更年期に差しかかったときに一番にすべきことは、自分でハードルを下げることでもあるのですよ。
ちなみに、将来のことが不安なのは誰しも同じです。私もそうです。だからまずは、頑張ることをやめて、荷物を少しずつおろしていくこと。精神的な不安は、自律神経の乱れからくる部分も大きいですから、荷物をおろしてラクになれば、体の不調も少しは治まり、自律神経も整いやすくなるはず。そうすれば、不安も少し軽減されるのではないかと思います。
- 松村圭子(まつむらけいこ)1969年生まれ。広島大学医学部卒業。広島大学産婦人科学教室入局後、2010年に成城松村クリニックを開業。「女性にとって身近で気兼ねなく相談できる生涯のかかりつけクリニック」を目指して、婦人科診療とエイジングケアの最先端治療をおこなっている。また『女30代からのなんだかわからない体の不調を治す本』(東京書店)、『女性ホルモンを整えるキレイごはん』(青春出版社)など著書も多数。 この人の回答一覧を見る
- 山本 奈緒子1972年生まれ。6年間の会社員生活を経て、フリーライターに。『FRaU』や『VOCE』といった女性誌の他、週刊誌や新聞、WEBマガジンで、インタビュー、女性の生き方、また様々な流行事象分析など、主に“読み物”と言われる分野の記事を手掛ける。 この人の回答一覧を見る
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