米倉涼子さんが、過去に観た映画を紹介するアーカイブ コレクション。
そのときに観た映画から、米倉さんの生き方、価値観が垣間見えます。

The Weinstein Company / Photofest / ゼータイメージ

21歳でクリスチャン・ディオールの後継者に指名されたイヴ・サンローラン。若くしてデザイナーとして成功した彼の孤独や苦悩を描いた映画が『イヴ・サンローラン』です。
数年前に彼のドキュメンタリーを観て心動かされたのですが、今回の映画は少しくどいかな、という印象を受けました。というのも、サンローランは仕事でくじけるたびに精神のバランスを崩し、薬に頼ることの繰り返しだから。これはドラッグの話なの?というほどで、何があっても公私ともにサンローランを支えてくれるパートナー、ピエール・ベルジェがいなければ、一体どうなっていたのか……。
一緒に観ていた私の母も「ファッションの世界はこんな感じなの?」って、 ちょっと疲れてしまったみたい。母娘のデートで観るには、ヘビーすぎる作品かもしれませんね。

でも小さなサロンでショーを開いていた時代の映像は、すごく楽しかった! モンドリアン・ルックやサファリ・スーツなど、サンローランが生み出したデザインは本当に革命的だったんだなと感じました。
そういえば、この映画を観終わった母に「ブランドってそのブランド名の人が作っているんじゃないのね」と言われ、ちゃんと説明できなかった
私。イヴ・サンローラン、クリスチャン・ディオール、シャネル。いくつものメゾンが新しいデザイナーを迎えるたびに、それまで脈々と続いてきたそのブランドならではの精神をどんな風に受け継いできたんだろう? あらためて、ファッションについてそんな興味がわいた作品でもありました。

『イヴ・サンローラン』
1957年、 21歳で故クリスチャン・ディオールの後を継いで、デザイナーとしてデビューしたイヴ・サンローラン。若くして成功した彼の光と影に迫る。本人に酷似した主演俳優の迫真の演技と、貴重なアーカイブ衣裳も見どころに。

取材・文/細谷美香
このページは、女性誌「FRaU」(2014年)に掲載された
「エンタメPR会社 オフィス・ヨネクラ」を加筆、修正したものです。