川良 なるほど。だから、大森さんのミモレはジャンルの幅も広いし、新しいこともどんどんスタートさせてきたんですね。ミモレの理想郷のビジョンがはっきりあった。

大森 そうだね。種を蒔き散らかしておいたので、あとは咲子が育てて、きちんと収穫してくれると信じてる(笑)!

川良 はい。来年の5周年に向けてミモレらしい素敵な果実を得られるように頑張ります(笑)。今の話を聞いていて、大森さんの作るミモレが「公園」だとしたら、私がこれから作るミモレは「庭」なのかなと。ほっとできる「庭」。毎日小さな収穫が得られる「おいしい庭」。少し前に高校時代の友人たちと久しぶりに集まったんですが、親の介護だったり、仕事のことだったり、家族のことだったり、深い悩みがそれぞれにある。でも、みんな「ミモレは読んでるよ」って言ってくれて。ミモレ世代の抱えていることは、すぐに解消できる問題ではないからこそ、ミモレを読んでいる時間は気分があがったり、心が軽くなってくれるといいなと。ミモレを通じて「毎日お疲れ様」と伝えられたらいいなと思います。

大森 母性の人、咲子らしい!

川良 いろいろな役割を生きていてすでに頑張っている人に、もっと頑張れとは言えないですよ。私は特に言えないタイプ(笑)。でも、自分の根っこのある疲労感や不安、焦りのようなものから自由になるために、少し考え方を変えたり、新たな行動に踏み出したりすることは必要ですよね。忙しさを理由に、頭を動かすこと、心を動かすことをやめてしまったら、結局自分が辛くなってくる。「おしゃれ更年期の処方箋」「脱ほっこり」などファッションのヒット企画も、自身の変化に気づいて、何か少し変えてみるという提案だからこそ、多くの人に共感していただけたのだと思います。

ミモレは5周年にむけて収穫期へ!【大森×川良・新旧編集長対談】_img0
編集部プチ情報:「私がカツオで、咲子はフネさん。本当に、いつでもソバで、見守っていてくれて精神的に助かった!」(笑)。昭和!


大森 そうだね。ファッションは自分を考える入口としては本当に最適なツールだと思うし、自信にもつながるものだと私も思う。でも、排他的になってはいけないと思っている。おしゃれする楽しさっていうのは絶対にあるのだけど、それゆえに“おしゃれヒエラルキー”ができやすい。その上位の人しか読んじゃいけないムードを漂わせてはいけない。これからも誰もが安心して心穏やかに読むことができるミモレであり続けて欲しいな。

川良 そうですね。おしゃれになるためのおしゃれじゃないし、おしゃれとの距離感もまた人ぞれぞれだと思います。年齢や職業の有無、住んでいる場所、子どもの有る無しなど属性を限定しない、というのがサイトスタート時から揺るがない部分ですし、「みんな違ってみんないい」というスタンスは変わらないです。

大森 すべてのことに万人共通の正解はないと思ってて。たとえば、ミモレの運営をしている時に、社会や会社、媒体、それぞれに正義があるのだと痛感して。だからこそ、自分なりに考えた自分の正義を貫くしかないのかな、と。なんとかふんばりたい、とジタバタしておりました。

川良 それは本当にそうだと思います。引き続き、自分の考えや感性を言語化する助けになるような記事も大切だと思っています。大森編集長のツレヅレもラストスパートが始まっていますね。コメントもたくさん頂いています。どこかで連載してほしい、書籍化してほしいという声もありますね!

大森 それには本当にビックリ。そしたら、他の出版社で働く知人から「本、出すの? 出すなら講談社からじゃなきゃダメなんでしょ?」と連絡もらったりして。まっ、現時点で弊社からは誰からのオファーもないわけなんだけど(笑)。こういうコメントをいただけるということ込みで、ミモレという場所は「なんと優しいコミュニティなのか!」と改めて感動してます。続けようなんて考えてなかったけれど、引き続きどこかで私の雑文を徒然なるままに綴るのもアリなのかもしれない。今はそんなふうにぼんやりと思い始めてきたところ。クラウドファンディングして、ZINE(※自作の文章や絵、写真などを少量印刷した小冊子)つくって、ブックフェアなどで手売りしても楽しそう、とか。こんなことをケセラセラな私が考えられるようになったのは、やっぱり読者の方々のパワーなんだよなぁ。

川良 そうですね。ミモレの一番の宝物はなんといっても読者の皆さん。本当に素晴らしい読者に恵まれているなと常に感じています。イベントなどで何度か言われたことがあるのですが、「ミモレを読んでいる時間は私が私でいられる」と言っていただけるミモレであり続けるように、私なりに力を尽くしていきたいと思います!


編集長が交代することで対談が行われるのはおそらくミモレだけのこと。ミモレは読者の皆さんとともに作ってきたという自負があるからこそ、今の状況やビジョンをしっかりとお伝えしてしたいという思いがあったからです。川良咲子新編集長のミモレが本格スタートするのは7月1日から。どんな「庭」ができあがっていくのか、楽しみにしていてください!

撮影/目黒智子 取材・文/幸山梨奈