7月からWOWOWで放送される『湊かなえ ポイズンドーター・ホーリーマザー』は、湊かなえさんの同名小説をドラマ化した作品です。小さな田舎町で母一人娘一人、行き場なく煮詰まっていったその関係が、たどり着いた先を描きます。「どちらの側から見るかによって、見え方がまったく違ってくると思う」と語るのは、主演の寺島しのぶさん。演じる佳香は、新進女優となった娘・弓香を、幼いころから今に至るまで、精神的に呪縛し続ける母親です。自身も子供を持つ母親として、また母を持つ娘として、その母娘関係をどのように感じたのでしょうか?

 

寺島しのぶ(てらじましのぶ) 女優。1972年12月28日生まれ、東京都出身。父は歌舞伎役者・尾上菊五郎、母は女優・富司純子、弟は歌舞伎役者・尾上菊之助。舞台、映画やドラマに出演し、高い評価を得る。2010年に映画『キャタピラー』で主演を務め、『第60回ベルリン国際映画祭』の最優秀女優賞にあたる銀熊賞を受賞した。私生活では2007年にアートディレクターのローラン・グナシアと結婚、一児の母。


口では自立しろと言いながら、娘を自立させたくない母親


「私の演じる佳香を、最後まで理解できない人もいると思います」
インタビューが始まって開口一番、寺島さんはこんな言葉を口にしました。

「この作品は、“それでもいい”という姿勢で作ろうとしていたから。単に“どちらが良くて、どちらが悪い”という単純な作り方では伝わらないと思うんです。今の時代って分かりやすく説明してくれる作品が好まれがちですが、説明できない余白を残し、視聴者がそれぞれ考えるようなドラマがあっていいな、と。民放とは異なるWOWOWさんの挑戦はそこにあると思うし。今回は、監督もスタッフさんもみんなお芝居が好きで、ディテールを楽しむ方たちばかりで、色々な意見を出し合って1シーン1シーン作ることができました」

例えば、弓香は「うさぎ」のグッズが大好きで、マネージャーは彼女のことを「うさぎ」と呼び、一人暮らしの部屋にはウサギのぬいぐるみがあり、彼女が「うさぎ」好きであることを周囲はみな知っています。

「そこは監督のこだわりだったんですが、私は“どうして好きになったのか?”という部分に興味がわきました。それで、ある場面で佳香が弓香に渡すカードを――台本に詳細はなかったのですが――うさぎがついたものにしてもらったんです。幼い頃からこの子は“うさぎ”を与えたら喜ぶ――佳香のそういう態度が、弓香に対して“いつまでも子供でいてほしい”という刷り込みになっているんじゃないかと。母親って、口では“自立しろ”と言いながら、子供に介入し干渉し、いつまでも自分の手の中に置いておきたいんですよ。そうやって子供に植え付けられているものがあるんです」

 

 

母親の言うことを聞けなかった、自分が“娘”だった頃


その一方で、佳香が、女優である弓香に浴びせる言葉には、「娘」として身に覚えがあったと言います。

 
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