大切な人の死をきっかけに、生きることに疲れを感じるようになってしまうこともあります。果たして生きていくこととはどういうことなのでしょう? 7年前に夫である流通ジャーナリストの金子哲雄氏を亡くし、現在、終活ジャーナリストとして活動されている金子稚子さんが、心に染みるお話をしてくださっています。

そらのそらさんからの質問

Q. 最近父が亡くなったことで早くに亡くした夫の記憶が蘇り、生きることに疲れを感じるように……。


主人を早くに亡くし、ずっと子育てと仕事に追われ、ようやく落ち着いたと思ったら父が急逝。たくさんのモノが父の記憶を呼び覚まし、主人の記憶もまた巡り、生きることに何だか疲れを感じるようになりました。好きだったことも楽しくない。仕事は淡々とこなせるのに、自由な時間を楽しめなくなってしまいました。食べればいい、みたいに食事もいい加減です。この状態が続くのか、あるいはこのままじっとしていれば、自分が楽しんでも罪悪感を持たないようになるのか……、不安です。母の前では元気なふりをして、一人になると落ち込む、この悪循環です。生きていくってどういうことなのでしょう?(46歳)


終活ジャーナリスト 金子稚子さんの回答

A. 今を味わう。生きるということは、その膨大な作業の積み重ねだと思っています。

そらのそらさんの状態は、第10回でもお話させていただきましたグリーフ(喪失によって起こるコントロール不能な精神的・身体的状態)ではないかと思います。これまでは子育てと仕事が忙しくグリーフが封印されていたのが、お父さまの死によって一気に溢れ出したのではないかと……。

お辛いと思うのですが、今はそのお辛い気持ちに蓋をせず、深く味わってほしいと思います。自由な時間を楽しめないことも、それをそのまま味わってください。落ち込んでも良いのです。お母さまの前で元気にしなくても良い。私は、無理をして人と会わなくても良いとすら思っています。私自身も、夫を亡くした後は、ずっと海の底で横たわっているような感覚でした。何も聞こえないし、光もないし、生き物もいない……。そらのそらさんも、もしご主人が亡くなったときの感覚を思い出したら、どうか気持ちを逸らさず思い出してください。そして、その中で感じるものを深く味わってほしいと思うのです。

今を味わう。生きるということは、私はその膨大な作業の積み重ねだと思っているのです。

 
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