会社以外の仕事である程度、生活費を稼ぐことができれば、あまりギャラをもらえないタレントも仕事を続けることができます。タレント側も、同じ生活費を稼ぐのであれば、本業とは関係のない仕事をするよりも、何らかの形で「芸事」に関係した形でお金を稼げる方がよいに決まっています。

 

これはあくまで筆者の想像ですが、こうした事情から吉本側は、タレントが会社を通さずに仕事を受けることについて、かなりの範囲まで黙認していたのではないかと思っています。というよりも、むしろこの業界では、会社以外の仕事こそが芸を磨くという認識があったはずです。

タレント・芸人というのは、人を楽しませるプロフェッショナルです。どのようなパーティや会合であっても、すぐにその場を盛り上げることができるスキルを身に付ければ、間違いなくこの世界でやっていけます。社外での付き合いが上手な芸能人には、あちこちからお呼びがかかるようになり、最終的には本業でのスポンサー獲得にもつながってきます。

以前、筆者が海外のリゾート地に旅行に行った時、同じホテルにある芸能人夫妻が宿泊していました。一緒に行動していたのは、実業家と思われる裕福そうな夫婦でしたが、雰囲気から察するに、この実業家が芸能人を旅行に招待したようです。こうした有力な人脈を開拓することも、彼等の仕事のひとつであることを実感させてくれる光景でした。

一般的なビジネスパーソンに当てはめれば、社外活動が活発で、豊富な人脈を持つ人は、会社の仕事でも大きな成果を上げるという図式ですから、(悪い事であるというニュアンスが強く出てしまう)「闇営業」という言葉には多くの業界関係者が違和感を持ったわけです。

もちろん、反社会的勢力からお金をもらうことは許容されませんから、宮迫さんや亮さんに責任があるのは事実ですが、こうした社外活動をすべて排除することになってしまうと、結果的に芸能人の活躍の幅を狭めてしまう可能性もあるでしょう。

実は、一連の問題は、一般的なビジネスパーソンにも関係してくる話かもしれません。その理由は、政府が副業推進に舵を切っており、会社の従業員であっても、会社を通さない仕事をする人が増えてくるからです。

芸能人と同様、社外での仕事をうまくこなせる人は、本業でもプラスの効果が期待できますが、副業でどのような仕事を受けるのか、そこでのリスク管理をどうするのかについては、すべて本人が責任を負わなければなりません。これからの時代は、一般的なビジネスパーソンも、芸能人のようなセルフ・マネジメント力が求められることになるでしょう。

前回記事「素直に謝れない人は、何千万円も損しているかもしれない」はこちら>>

 
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