米倉涼子さんが、過去に観た映画を紹介するアーカイブ コレクション。
そのときに観た映画から、米倉さんの生き方、価値観が垣間見えます。
最初から最後まで、すべてがかわいい! と思えた映画『グランド・ブダペスト・ホテル』。ヨーロッパの美しい山並みを背景にしたホテルを舞台に、伝説のコンシェルジュが常連客のマダムの遺産争いに巻き込まれていく様子を描いた作品です。
お部屋の壁紙からお菓子の箱、エレベーターの中まですべての美術がかわいくて、ユニークなカメラワークにも目がくぎ付けに。しかも個性的な登場人物たちに夢中になっているうちに、時代の移り変わりも自然と頭に入ってくるんです。
ゆったりしたテンポの語り口なのですが、ミステリー調で緩急のバランスがいいからか、最後までこの世界に引き込まれっぱなしでした。架空の場所が舞台になっていますが、戦争の影を感じさせるところも、この作品に独特の雰囲気をもたらしています。
どのキャラクターも魅力的ですが、私が好きだったのはコンシェルジュの愛弟子でもあるエレベーターボーイの男の子。制服もかわいいので、ぜひ細部までチェックしてくださいね。すべてに美意識が徹底されていて遊び心のあるこの映画を観て、『ライフ・アクアティック』や『ダージリン急行』など、そのほかのウェス・アンダーソン監督作品も観てみたくなりました。
このページは、女性誌「FRaU」(2014年)に掲載された
「エンタメPR会社 オフィス・ヨネクラ」を加筆、修正したものです。
『グランド・ブダペスト・ホテル』
ヨーロッパのどこかの国に建ち、かつては最高峰と謳われたクラシックなグランド・ブダペスト・ホテ ル。ここで働く伝説のコンシェルジュ、グスタヴが、常連客である伯爵夫人を殺した容疑者になってしまい……。レイフ・ ファインズ、ジュード・ロウら豪華キャストが出演。